【一日一作プロジェクト】「福樹(ふくじゅ)」を作った。家の大整理を行い、不要なテーブルを捨てにゴミ捨て場へ。
「コロコロにテーブルを乗せて」
引きずって行く。動かないよう「縄」でぐるぐるに巻きにして。それはよかったのだけど、いざ捨てる際に、縄を切ってコロコロから離脱させねざならない。
「あっ、ハサミを持ってくるのを忘れた」
うそ。あかんやん。仕方ないので、爪を食い込ませて縄をほどこうと試みるが、もともとハサミで切るつもりで縛り上げた縄。びくともしない。
「緩む気配なし」
じりじりと汗が噴き出してくる。10分ほど爪を使ってトライしたが、これは「棒」か何か道具が必要だ。辺りを見回していたその時
「ゴミ捨て場あさりのおじさん」
が、よろよろと近づいて来た。こうした半プロの「あさり人」が、マラガには沢山いる。自分の縄張りを回って役立つものをゲット。使ったり、直して売ったり。それで生活を立てていることをみんな知っているので
「使えるものはコンテナの中でなく、外にそっと置く」
のが、秘かなルールになっている。人間的なマラガ。それで回っていくのだから、これぞリサイクル。この日は、テーブルの他にも「ゴミ袋5袋」をコンテナの外へ、そっと置いた。
「誰かに使ってもらえたら」
と思って、わずか10分あまりでおじさんが現れたので、めちゃうれしかった〜。縄相手に苦戦している私を見ておじさんは
「ハサミ使う?」
と声をかけてくれた。「えっ、持ってるんですか?」「あるよ〜」。ボロボロのリュックからハサミを取り出すと、そっと手渡してくれた。
「ムーチャス・グラシアス!」
現れし、救世主(笑)。おじさんのおかげで、あっというまに縄を切り、テーブルをコロコロから離脱させることに成功。声をかけてもらえなかったら、いったいどうなっていたことか。
「助かりました〜」「こっちの袋は?」
私が持ち込んだ5つのゴミ袋。中身は全て使える日用品。
「バッグ、ハンガー、皿、服、CD、布なんかが入ってます」
おじさんは満足げにうなずきながら、本日の戦利品を悠々ゲット。たった一瞬の出来事。偶然の、通りすがりのような。あるいは、不思議な風が私たちを結びつけてくれたのか。
「互いが、互いの必要としているものを届け合う」
ために。私にはハサミ、おじさんには日用品が。私たちの人生は一瞬、ゴミ捨て場で重なった。人生は不思議な流れ、物語に満ちている。
「互いが互いの役に立つ」
その、なんという幸福感。「ぷちっ」と心に生まれる思いやり。感謝の気持ち。そこから芽が出て、葉が生えて、枝や根を伸ばし、花を咲かせ、やがて
「福樹(ふくじゅ)」
となる。私たちの心に育つ聖なる樹。50年、60年、70年・・・なかなかの樹齢(笑)。歓びも悲しみも栄養にできる、心の大樹を大切にしよう。みなさま、すてきな一日を。