ピット・ファイアリング(3)

昨日の続き。結果から言うと「縄文土器」が出来上がってきた(笑)私の作品の持つポップさとはまるで異質の、原始的な力強い「土器」が突如目の前に現れた。

ピット・ファイアリングはもともと古代から行われてきた原始的な焼きのスタイルで、火の中にぶっ込んでひたすらほかっておく。

だから「火加減」をすることはなく「火(焼き)がつける朱色や黒」を、アクシデント的に楽しむものらしい。

そういう理由で今回はペイントなし。私自身は「鮮やかな色でペイント」したかったのだが、それは次回に回すことに。

先生が一つ一つ、手作りレンガ釜から作品を取り出していく。さっきまでの大騒ぎが嘘のように、みんな真剣な表情。

「壊れていませんように!」

それが共通の願い。先生の手によってゆっくりと、巻き付けられていた素材がはがされていく。何十という目がその手に集中。

煙に包まれ全身スモーク状態。すすだらけ。でも、次々と現れる焼き物にみんな心を奪われ、再び大騒ぎが始まる。いちいち拍手喝采。

「いい赤みがついたね」「こっちのは白いまんまだよ」「割れなくてよかった」

そして。いよいよ私の番。あれだけ凹凸があったのに、穴もボコボコ開いてたのに、壊れてなかった。涙が出るくらいうれしかった。

すぐには熱くて触れない。ゴミやすすがくっついて、今生まれたばかりという表情。冷めるのを待って記念撮影。

手だってすすだらけ。その手で顔をぬぐったものだから、額と鼻にすすをつけたまま(写真)。

家に持ち帰り水洗いし、さっそく土器に「ロウソク」を入れてみる。すると。なんと。

開けた穴の形から、背後に様々な影が浮かび上がった。まるで土器から羽が生えているよう。

「すごいっ、空間アートだ!」

しばし言葉を失う。火の中から生まれてきた土器。きっと火との相性がいいんだろう。

ロウソクの火に照らし出されて、再び生き生きとした表情を浮かび上がらせる。なんという存在感!

なんという世界。あまりに力強く、アトリエの中でそこだけ異様なパワーを放っている。カラフルな他の作品と全く調和していない(笑)。

洗練された陶器とはほど遠い原始的な土器。それが私の陶器体験第一号。大好きな色から離れて、火と土とだけ向き合う貴重な体験だった。

問題は、重すぎて日本に持って帰れないところ。これからどんどん作っていくつもりだけど、どうしよう。

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