楽譜にペイント

9月の新学期スタートと共に「楽譜の大整理」をした。これまでも捨てたりもらっていただいたりしたが、それでもまだ大量にある。

そこでいよいよ「処分か」と、心を痛めながらページをめくっていた。その時だった。ずばっと脳天に光が走り、次の瞬間そこにあった筆で描き出していた。

その日はペイントする予定はなく、午後からピアノレッスンが入っていたので、掃除や教材の用意などすることは山のよう。

でも。入るともうだめ。止まらない。私の一番大きな問題は「やり出すと集中してしまいやめられない」ことなのだ。

いったんこのモードに入ると「時間」「音」「肉体」などはどこかに行ってしまう。案の定、はたと気がつくとレッスンの30分前。

ペイントするつもりではなかったので、新しいTシャツでのぞんでしまった(涙)あ〜、絵の具のついた手をシャツでふいちゃって。

しかし。出来上がったものは、今までにない空気を含んでいた。そして。絵の具をギリギリの線で耐えうる紙質であることもわかった。

「ってことは・・・」

楽譜の山を眺めながら、妙に興奮してきた。

「これ全部、自由に描ける紙の山ってこと?」

その発見は、私の全身を歓びで貫いた。さっきまで「処分」しようとしていたものが、宝の山に見えてくる。

さっそく楽譜本をカッターで一枚一枚バラバラにする。ざっと数えて300枚。楽譜本はまだ数十冊あるのだ。すごい。これぜんぶ無料。

これからは心置きなく、描くことができるのだ。紙だから耐久性も高級感もない。やはりキャンバス地とは違う。

お客様の立場からしたら「作品(商品)としての価値」は下がるかもしれない。キャンバス地じゃないから。

でも。私には「贈り物」のように思えた。これで心置きなく毎日自由に「ラクガキ」ができるのだ。

ピアニストをやめて3年、音楽から遠のいた。めくることもなかった楽譜たち。まさかこうしてよりを戻す日がくるなんて。

文句も言わず、待っていてくれた楽譜たちに感謝したい。そしてこれからは「音楽」になるかわりに「絵になって」第二の人生を一緒に歩んでもらえたらと思う。

 

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