4.お皿ペイント&氷の贈り物

昨日の続き。「マドリッドアート三昧!」滞在記。この日はハビ吉がお昼に仕事が終わり、ランチに帰って来るということで、朝から買い出しに。その時、アイフォーンがピンと音をたてた。

「ホルヘもランチに行くけどいい?」
「ポル・スプエスト!(もちろん)」
作るのは「クスクス」だから、何人来たって大丈夫。

かぼちゃ、ズッキーニ、ニンジン、玉ねぎ、ひよこ豆、肉・・・と野菜いっぱいのクスクス。煮込み料理なので、見た目はごついが消化はいいのだ。甘みを出すために「干しぶどう&プルーン」も入っているし、最後に炒めたカシューナッツをばらまいて、できあがり!

暑いので、食欲はイマイチ。のマドリッド滞在。なので、香辛料をきかせて食欲を促す。にんにく、しょうが、シナモン、クミン、ウコン、コショウ・・・。冷えた白ワインで乾杯(写真三枚目)。

ホルヘは今回の「マドリッド~マラガ間」を、ハビ吉と共に運転してくれた大切な友人。なので、ランチをごちそうできてよかった。二人とも仕事帰りで、お疲れさま~。

さて、食後にテーブルを片付けていると
「このお皿、欠けてるからもう捨てようかな」
と、ハビ吉が白い陶器を手に小首をかしげている。

「捨てるなら、ちょうだい!」
「えっ、いいけど・・・欠けてるよ」
「いいの、ペイントするんだから」

手渡されたまっ白の陶器は、光り輝いて見えた。大きさも手ごろ。平皿で描きやすそう。
「じゃ、描かせていただきまーす」

青いマーカーで一気に描く。あぁあ、気持ちいい。滑りがよくて。そりゃお皿だもんな(笑)滑る滑る。
「はい、プレゼント。小物入れ皿くらいにはなると思う」
「えっ・・・・・」

ゴミになるはずだったお皿は、あっというまにプレゼントに変身した。あまりの変化に、お皿だって驚いていただろう。ハビ吉も数秒無言。
「きらい・・・?」

いちおう、モデルは私たち。
「空を飛ぶハビ吉と、ピアノを弾く私を描いたんだけど」
「・・・・・・」
それでも黙っているので
「好みじゃなかったら、持って帰るからいいよ」
部屋のスタイルに合わないとか、あるかもしれないし。

ハビ吉は無言でお皿を受け取ると、リビングの棚にそっと飾った。
「ムーチャス・グラシアス」
「嫌いなら、持って帰るって」
「僕のだよ」
「だって、うれしそうじゃない」
「びっくりしたんだよ」

その日の夕方。マドリッドに来てから毎日少なくとも百回くらいは
「暑い暑い~。眠れない~」
をくり返す私に、いい加減うんざりしていたハビ吉が
「部屋を涼しくする方法を考えた」
と、まじめな顔で言ってきた。

「どうするの?」
「まずは、スーパーへ行こう」
何をするかと思えば「氷の袋」を、すごい勢いでカートに入れている。
「いくつ買うの?」
「少なくとも12袋」
「はぁあ?」

その瞬間、嫌ーな予感がした。
「まさか。まさかとは思うけど、これで・・・」
「そう、部屋を冷やす」
「うそでしょ」
「やってみないとわからないよ」

氷12袋を二人で抱えて、マンションへ。部屋に帰るなりハビ吉が
「さぁ、ここに氷をすべて入れて!」
と、命令を下す。ここに?って、どこに。

いつのまにか、リビングの床には不思議な物体が用意されていた。
「これ・・・子供用のプールだけど」
「そう、ここに氷を入れて、部屋全体を冷やす」
「真面目に言ってるの?」
「大真面目」
「でも、寝室に置かなきゃ意味ないじゃん」
「だから。今日はここにマットを持って来て、床に寝るんだよ」
「・・・・・・」

私もかなり「突拍子」人間ではあるのだが、水瓶座が二人そろうと、もう収拾がつかない。というか誰か止めてくれ。という感じ。
「あんまりうれしそうじゃないね。ももが暑い暑いって言うから」
一瞬、瞳を伏せるので、あわてて我に返る。
「ムーチャス・グラシアス。ちょっとびっくりしたんだよ」

なんか、どこかで聞いたようなセリフ。

私はゴミになるはずのお皿にペイント。ハビ吉は氷で部屋を涼しくする。お互いに「贈り物」をしようという気持ちはあるのだが、あまりに相手の意表をついてしまい、呆然という結果を引き起こす。

その時、私の脳裏にあの不朽の名作「賢者の贈り物」がふと浮かんだ。お互いを思って、贈り物をする。あれはいい話だった。しかし、私たちのこの「贈り物ストーリーのジ・エンド」は

「子供用のプールに、水着になって入る」
という形で、フィナーレを迎えた。どんな絵なんだ、いったい。感動なのか、呆然なのかよくわからない。

「もも、写真撮るから!ビデオもいくよ」
「うわっ、寒っ」
さすがに、ブログに載せるのはどうかと思い、その時の写真は割愛。

その夜は、これまでの中で一番涼しく、ゆったりと寝ることができた。もちろん翌朝目が覚めると、私の横には子供用プールが。そして12袋の氷はすべて、水になっていた。

「ほら、大成功!」
大満足のハビ吉が、その話を友人にして回ると
「そんなに暑いなら、うちに泊まりに来ればよかったのに。冷房あるよ」
の一言で、片づけられたのであった。
(明日に続く)

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