コルドバのパティオ祭・6

昨日の続き。朝七時半にセットした目覚ましが軽やかに鳴り、私たちは「うううっ」と動物のようにうめき声を上げながら、もぞもぞと動き出した。

「信じられない・・・もう朝?メスキータ・・・やめる?」
この辺の、状況に合わせて予定を変更する私をよく知るハビ吉が、叱咤激励する。
「ダメ!早く起きて。この瞬間しか無料で見られないんだよ」
「本当に無料なのかなぁ・・・」

がばっと勢いをつけて、ハビ吉は一発で起き上がった。さすが。スチュワートはちがう。早朝フライトで四時、五時起きに慣れてるので、七時半など軽いもの。それに比べ、一年半前までピアニストだった夜型の私は
「ブエノス・ディアス!」
と、爽やかに言われても
「うううっ・・・」
とうめくのみ。とても会話ができる状態ではない。

眠い目をこすりながら外に出る。朝の澄んだ空気が気持ちいい。再び石畳の小道を歩き出すと、ようやくこれから
「あのメスキータを見るのだ!」
という歓びと元気が、少しずつ湧き上がってきた。

「ううっ、足が痛いよー」
「がんばって!歩けるよ」
弱音を吐いても、ハビ吉は鼻っから聞いてもいないし、歩くペースはまったく落ちない。なにしろ、あと十五分後に「メスキータの入口」に並んでいなくてはならないのだ。そうしないと、無料で中はに入れない。らしい。って本当なのか?(スペインでは情報がまったくあてにならない)。

「うわっ、あと五分!」
ハビ吉が私の腕をむんずとつかみ、すごい勢いで走り出す。ひきづられるようにしてメスキータへ到着。
「あああっ、あそこの行列だよ!並ぼう」

最後の力をふりしぼり、メスキータの入口へ。係のおじさんが順番に中へ入れてくれる。
「あぁあ、無料伝説は本当だったんだ・・・」

無料。眠さも、足の痛さもすべてこのため。よろよろと中へ入ると、あの馬蹄形のアーチが出迎えてくれた。二十年ぶりに見る「メスキータ」は、ただただ圧巻であった(写真一~四枚目)。あぁ、来てよかった(涙)。

かつてのイスラムの都、コルドバ。そのシンボルである「メスキータ」。今では「メスキータと教会が合体した」珍しい場所になっているが、歴史的にも美術的にも計り知れない価値を持つこの建造物を、レコンキスタの際に破壊しなかったキリスト教徒に感謝したい。

さて、メスキータを堪能した後は、カフェテリアへ。やっと待ちに待った朝食。写真手前が私の頼んだ「カフェ・ミタ(コーヒーとミルクが半々)」。後ろのがハビ吉の頼んだ「ミルクの分量が多いコーヒー」(五枚目)。

しかし、驚いた。初めて知ったがマラガでは「ソンブラ」「ヌベ」と呼ばれるこのタイプ。お隣コルドバでは、まったく通用しないのであった。電車でたった一時間なのに。文化的距離を感じて、しばし呆然。

そして、頼んだ「生ハムパン」も、まったく見たことのないスタイル(六枚目)。マラガでは生ハムのスライスしたものが数枚、どん!と乗っているのだが、ここコルドバではなんと!生ハムが小刻みに。おぉお。

ぺろりとたいらげ、「パティオめぐり」を再開!おーっし。回るぞ~。なにしろ昼食後、私たちはここコルドバで現地解散。それぞれマドリッドとマラガへ、電車で帰らねばならない。

パティオめぐりに使える時間は、残すところ三時間。私たちはものすごい勢いで「パティオ見学の行列に並ぶ、見る、写真を撮る」をひたすら繰り返した。

昨日から歩きすぎて足が痛かったが、またマラガに戻ってからゆっくり休めばいい。あぁあ、どこも見てもフォトジェニック。コルドバの旧市街を駆け回る(八~十三枚目)。

後日、この二日間の歩数を調べてみると、驚くべき事実が判明。二日とも、きれいに二万6000歩。17キロ強を歩いていたことが判明。足が痛いわけだ。それもサンダルで。

さらに後日談だが、コルドバから帰った翌日、セビジャーナス教室があった。あまりの痛さで、足を引きづりながら踊ったが、それくらい「躍るのが好き」である自分を、再確認することとなった。

(明日・最終回に続く)

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「コルドバのパティオ祭・6」への2件のフィードバック

  1.  イギリスいたとき語学学校で勉強していたスペイン人たちは
    みんないいひとでした。スペイン人たちと知り合って
    スペインめぐりを行い、スペイン語ばかりを覚えてしまう
    日本人も多いそうです。スペインの人ってやさしいとは
    思うけど延々と遊び続けるからペースが合わないのが心配・・・
     次の機会があれば一緒に上手く遊べるといいですけどね・・・・

  2. 「スペインの人って・・・延々と遊び続ける・・・」
    すばらしい。そのとおり!池田さん、よくぞ言ってくれました。

    この時間の使い方、ペース配分に最初日本人はまず
    疲労困憊しますね(断言)。疲れ切って立ち上がれないほど。
    「遊んでるのに疲労困憊」(笑)懐かしいな~。

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