オウムの脱走&洪水事件(1)

日本からマラガへ無事到着。したのはよかったが、実はマンションに入るなり、何か様子が、そう、私が日本へ行く前と、何かがちがうのに気づいた。その個所は、ずばり台所。もっと具体的に言うなら「オウムの周囲」。

オウム本人は、かなり元気で私を見るなり
「ぐぐぐ・・・うーっ」
といつものようにうなりながら
「私はずっと、ほったらかしにされていた」
ことを訴えた。が、なんとなく鳥かごの周りが「模様替え」されている。「どこ?」と言われると、すぐに出てこないのだが。

何しろ、長旅で疲れきっていたので、深いことは考えず、まずオウムを鳥かごの外に出し、しばらく遊んでやることにした。もう夜の十一時半、(涙)。本当はすぐにでも寝たいかったのだが。子供がいると、そうも言っておられず。

「今、出してあげるからねー」
鳥かごのドアに手をかけようとした、その瞬間であった。
「あぁっ、これは!」
なんと!鳥かごの扉には、がっちりと「南京錠」がかけられている。
「いったい、なぜ・・・」

私が日本に行っている間、オウムの世話はお隣のドリーさんにお願いしてあった。これまでも何度もお世話になっているが、こんなことは初めて。
「いったい、ここで何が・・・」

オウムはふてくされたような顔で、私を見上げている。
「わかった、わかった。今、出してあげるから」
とりあえず、鳥かごの下を開けてオウムを出す。

「うーん、明日さっそく、ドリーさんに聞いてみよう」
その日はもう遅かったので、オウムと遊んだ後、すぐに爆睡。オウムも今夜は特別に、鳥かごの外で寝てもいいことにした。そう、この辺が甘いのである。オウムは私よりずっと、うわてなのだ(それを知らされるのはまだ、数時間後のことなのだが)

で、朝。それも早朝。私がまだ、長旅の疲れで爆睡している時に、オウムはやってきた。
「ぐぐぐ、ぷーっ!」
何かが、布団の上に乗っかっている。目を薄っすら開けると、灰色のふわふわしたものが、うろうろしているではないか。それがオウムであるとわかるのに、数秒を要した。

「うわーっ。だめだめ、ここにいちゃ」
寝室は禁止ゾーンなので、あわてて飛び起き、オウムを追い払おうとする。が、オウムだって三週間もほったらかしにされていたので、おめおめとは引き下がらない。
「撫でて・・・」
と、頭を下げてすり寄ってくる。

「うわあーっ」
自分でしたこととはいえ、なぜ昨夜、鳥かごの中に戻しておかなかったのか。後悔しても、時すでに遅し。しばし、オウムの頭を撫でる。なんとか落ち着いてくれたようで、今度はきちんと鳥かごの中に返却。

二度寝し、目が覚めたら八時過ぎ。さっそく朝から掃除、洗濯。テラスへ出て深呼吸。ああー、いい青空。これぞマラガ!スーツケースを開け、お土産を手にさっそくお隣のドリーさん宅へ。
「ドリー!ブエノス・ディアス」

ドアが開き、私の顔を見た瞬間、ドリーさんは
「ああぁっ」
と、声を漏らし
「日本はどうだった?」
と、尋ねるより早く
「もうそれは、大変なことが起こったのよ!」
と、息絶え絶えで、私の腕を握りしめた。

そうであろう。南京錠がかけられていたのだから。
その時、私はまだ、オウムの潜在能力、信じられない行動に、まったく気づいていない、ただのまぬけな主人であった。

「三週間も閉じ込められてかわいそう」
なのは、オウムでなく
「三週間も、毎日引き起こされる事件に対応しなくてはならなかった」
ドリーさんの方、なのだった。
(明日につづく)

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