盗難事件・5

昨日の続き。うちの玄関で乱暴にドアを叩きながら、私の名を叫ぶ女性の声が。
「もも!開けて。いるの?大丈夫なの!」

ドアを開けると、そこにはセビジャーナス教室の踊り仲間Eさんがジャージ姿で立っていた。
「生きてたのっ!あぁあ、よかった。もう心配したよ」

ワッツアップの連絡先は、コピーを取っておかなかったためすべて消えていた。パソコンでいろいろできるらしいが、盗難事件に巻き込まれてからすでに

「パソコンを立ち上げる」
余裕と時間がないのである。ずっと立ったまま。出かけて戻って、レッスンして、出かけて。食事も台所で立ちっぱなし。それで一日が終わると、倒れるようにベッドへ。のくり返し。

「本当にごめんね」
これまでの「盗難事件」のいきさつを語った。Eさんは、目を丸くして話を聞いていたが
「何か起こってるとは思ったけど。まさかバッグごと盗まれているなんて・・・」

彼女は何より先に、私を強く抱きしめてくれた。
「よかった。無事で・・・」
私たちは一日に何度、友人の体温をまじかに感じながら生活しているのだろう。どんな言葉より、ボディランゲージは愛を伝える。それも一発で。

「みんなにボイスメッセージしよう!」
Eさんはいつもの笑顔を取り戻すと、私を無事発見したこと。盗難に遭ったこと。などを報告し、私にスマホを向けた。

「みんな、ありがとう。心配かけてごめんなさい。落ち着いたらまたみんなと一緒に踊りたい・・・」
思わず、言葉がつまった。熱い思いがこみ上げてきて、それが涙に変わる。

悲しいからでなく、感謝や愛情がうまく言葉にならず、涙になるのだ。

ちょうど盗難事件が起こる二時間前に
「明日、教室で会おうね!」
と私が残したメッセージが最後。それっきり行方不明。なので、仲間たちは大騒ぎしていたという。

「いったいどうしたのか」
「インフルエンザで倒れているんじゃ」
「意識不明なのでは」
「病院に担ぎ込まれたんじゃ」

数日間メッセージに返事がないので、いよいよその中の一人Eさんが
「これからももを見に行って来る!」
と、なったらしい。のであった。

後からわかったことだが、なんと心配した仲間たちが、ここ数日間で私へ送ったメッセージの数。
「125通」

これからは、ちゃんとデータのコピーを取っておこうと改めて思った。あるいは手書きで残しておくとか。

Eさんと仲間おかげで、またふつふつと元気が湧いてきた。
「よっし、まずは留守番をしてくれる人を探し出さねば!」

なにしろ明日は、大事なプロジェクト待っている。
「ドアから鍵部分を取りはずしてお店まで持って行き、直してもらったものを持ち帰り、再びドアに取り付ける」
という、大作戦なのだ。それも自力で。

問題はその間
「ドアには鍵がない」
ので、誰かに留守番をしていてもらわねばならない。

「大丈夫!見ておいてあげるから行ってらっしゃい」
と、心よく引き受けて下さったのがお隣のDさん。感謝。感謝の連続。私一人では何もできなかった。

「できるだけ早く帰ってきます。すみません」
ドライバーを使ってまずドアから鍵を外す。ここですでに汗びっしょり。

バス&徒歩でお店まで1時間、修理に1時間。帰りに1時間。計3時間の予定。バスに飛び乗った瞬間、お腹がぐー。

「あ、朝食まだだった・・・」
あわてているので、一番後回しにされるのはいつも「食事」なのだ。緊急事態に置かれると、食事はプライオリティから完全にはずされる。

一時間後。お店に着くとお兄さんが
「一時間くらいしたら戻ってきて!」
と言ってくれたので、ありがたし。やっと朝食にありつく。

カフェテリアのイスに座り、時計も見ずに、温かい紅茶&サンドイッチをいただく。まるで夢のよう。このまま溶けてバターになってしまいそう。

一時間後、新しい鍵部分およびキーを受け取り、家に飛び帰る。
「Dさん、ありがとうございました」
お礼のワイン&チョコレートを手渡し、休む間もなくその足で
鍵の取り付け作業。

やっと「鍵取り付け大作戦」が終了したのが、レッスン開始の20分前。オウムに食事を与え、水だけ飲んでレッスン開始。

いったい、いつになったら止まれるのか。常に動いているので
「全体を見る」
「深く掘り下げる」
ことが、まったくできない。

ただ、こなす。100本ノック状態。これがもう一週間続いている。とはいえ「アイフォーンおよび鍵」という二大問題が解決し、かなり精神的には落ち着いた。

お次はいよいよ「銀行のキャッシュカード」と「身分証明書鵜」である。はたして。
(明日に続く)

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