テラルに停電

暑い。
朝から『テラル』がやってきて、
家中の窓を、すごい勢いで閉めて回る。
仕方なく扇風機をかけ出すが、その瞬間
「フッ・・・・」
「うそっ」
マラガでは、よくある『停電』であった。

『テラル』か『停電』、どちらかなら、いい。
でも、いっしょはないんじゃないの~!
こんな閉め切った部屋で、扇風機もなく
修行じゃ、ないんだから。
ぶつぶつ言っていると、廊下から恐ろしい叫び声が聞こえてきた。

「ぎゃ~、助けてぇ~!」
いったい何事か、と住民が廊下に集まる。
「だれぇ~?」
と、お隣のドリーさんが、なぞの声に話かける。
「どこ~?」
「マリア。助けて!エレベーターの中」

エレベーターの中にはもちろん
『24時間・救急呼び出しボタン』が、設置されている。
が、そんなもの押したって
来てくれるのは1時間後、いや2、3時間かかるかも。

わたしたちはドアに手をかけ、すきまを作り
力づくで扉を開け、マリアを救出することにした。
「今、助けるからね~、がんばるんだよ!」
声をかけながら、みんなで力をあわせる。
15分後、やっとのことで、ドアが開かれると
「あああ~、グラシアス」
マリアは涙目になって、床にへたりこんでいた。

『マリア救出作戦』が無事、終了し、
わたしたちはふたたび、部屋に戻る。
暑い。
が、エレベーターに閉じ込められるよりは、ましだ。
恐ろしいものを見たあとは、謙虚になる。
感謝の念さえ、湧いてくる。

マリアよ、ありがとう。

わたしは、汗をたらたら流しながら
来週の『結婚式』で弾く曲の、楽譜おこしをはじめた。

 

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