バイオリン演奏のプレゼント

べラの誕生日にプレゼントとして
「バイオリンを弾く!」
と一週間前に、いきなり決めてしまったのはよかったが
実際、練習を始めてみると、もう大変。
なにしろ、どこに「ド」があるのかもわからないのだから
「涼しくなってから、9月からゆっくり始めたら?」
とべラ先生も、あきれ顔でおっしゃる。

しかし、特訓あるのみ。
「なせば成る!」
祖母、とくばあちゃんの言葉を、念仏のように唱えながら
「レレミーレーソーファー」
第一フレーズを、何度もくりかえす。
曲は「ハッピーバースデイ」なのだが、少しもハッピーという感じではない。
35度のマラガのうだるような暑さの中
「レレミーレーソーファー、ああっ、まちがった、うあぁ」
まさに、苦行である。

さて、弓はまだ使えないので
ピッチカート奏法(弓を使わず指ではじいて弾く)で、毎日特訓!
「ハッピーバースデイ」の曲になるのに、なんとか一週間。
慣れない姿勢に、肩は痛くなるは
弦を抑える左指の先が、痛くてジンジンするは。
しかし、この「努力」が、贈りものなのだ!と自分に言い聞かせる。

そして、いざ誕生日の朝。
まだ、ベッドで寝ているべラに向かって
「ハッピーバースデイ」の曲を弾く。

寝ぼけまなこで、むっくり起き上がるとべラは
「グラシアス!」
とつぶやき、パチパチと拍手をした。
誕生日でなければ、こんな下手なバイオリンでたたき起こされて
朝から不機嫌、になることまちがいなし。

誕生日は、不思議だ。
何をやっても許される。
だから、何か新しいことにチャレンジするのには、よさそうだ。
「バイオリン、貸して」
ベラはベッドの端に座ったまま、私の手からバイオリンを取り上げた。
「弾く前に、必ず調律しましょう!」
顔も洗えず、もじゃもじゃ頭で、バイオリンを調律しているべラを見ながら
「よし!これから毎月一曲、弾けるようにしよう!」
と、ひとり静かに心に決めた。

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