秘密のスポンジ

CIMG4832 ベラは「秘密のスポンジ」
を持っている。
これを、演奏にはいつも
大切に持っていく。

実はこれ、日本の100均
で買ったもの。
「このスポンジがほしい!」
と購入、大喜びで
きみどり家へ持ち帰った。

スポンジを手に喜ぶベラを見て、驚いたのは両親だった。
「こんなスポンジ、どうするの?ベラちゃん」
私は、ベラのかわりに答えた。
「これね、バイオリンを弾くときに使うんだよ」
「ええーっ、スポンジを?」
状況を理解したベラが、おもむろにスポンジをつかむと
いつもするように、そっと左の脇下へ入れた。
「バイオリンを長時間、支えるときに役立ちます」
「ははぁ~なるほど」

どんなふうに使うのか、ベラが実演して見せると
母が、思いがけないことを言った。
「だったら、スポンジをガーゼで包んだ方が、肌触りがいいんじゃないの?」

これまで、買ったスポンジをそのまま使っていたので
私はそういうものだと思っていた。ベラに聞いてみると
「そうしてもらえたら・・・うれしいです」
と、恥ずかしそうに、答えた。

これまで、17年もいっしょにいて
私は、ベラのわきの下でバイオリンを支えていたスポンジに
ガーゼを巻くことを、思いつかなかった。
母は一発で、「肌ざわり」を思いついた。

その瞬間、これまで母が
私が気がつかなかっただけで
「家族の肌ざわり」を
ずっと考えて生きてきたことに、気づいた。

「とみ子さん、ありがとうございます!」
ガーゼに包まれたスポンジを、ベラはうれしそうに受け取り
わきの下に当ててみる。
「きもちいい~」
17年間も、何も言わなかったベラ。
きっと、ザラザラで不都合なことだってあっただろうに。

母とベラ。
二人のやりとりを見ながら
自分の思いやり、相手を大切に思う気持はまだまだだな
と、思った。

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