大晦日の仕事のはなし

2013年をしめくくる「大晦日の仕事」のことを、まだ書いていなかった。
音楽屋暮らし、かつ貧乏暮らし、というのは
次々と、多種多様な問題が次々に起こるので
その解決に全力を尽くしているまに
あっというまに一週間、一ヶ月が過ぎ去ってしまう。
だいたい、11~12月にニッポンに行ったことだって、まだ書き終えていないのだ。

さて、「大晦日の仕事」である。
お隣のフエンヒローラ市にあるレストランで
わたしたちはディナーから年越しまで5時間「フルに働く」ことになっていた。
「フルに弾く」でないところが、去年までと違うところである。

スペインが不況に陥る前、わたしたち音楽屋は
「ディナー中の演奏」だけを、していればよかった。
それが、不況のあおりを受け、お客さんの量が減少。
それに伴う経費削減により
「ディナー中の演奏」「12時の鐘カウントダウン行事」「新年のディスコタイム」
の3部門を、別々のスタッフに頼む余裕がなくなってしまったのだ。
「だから、お願いします~!うちのボーイたちも手伝いますから」
「ええっ、それ全部、僕たちがやるんですか・・・」
受話器を持ったまま、べラはしばらく固まっていた。
ギャラは半額、で、仕事は3倍。
スペインの不況、行く先まっくらなのを、しみじみと感じる。

さて、当日。
まず「ディナー中の演奏」。これは、問題ない。
お客さんと楽しく2時間、音楽を楽しみながら年を越す。
ああー、すばらしい。
これぞ、音楽屋冥利に尽きるというもの。

11時半になり、わたしたちは次の仕事
「12時の鐘カウントダウン行事」」の用意を始める。
「鐘って、どんなのですか?」
「これです!」
「うわあぁ~っ」
ボーイが運んで来たのは、どっしりと重そうな
高さ30センチはあろうかという鐘。
これを片手に持って、もう一方の手でつけるのだろうか。
「女性の方では、無理かもしれませんねぇ」
のひと言で、鐘をつくのはべラ、カウントダウンはわたしの仕事となった。
打ち合わせをしていると
「ガアアァーン!」
「あ、すいません。練習ですっ、まだ20分ありますっ」
などと必死にあやまりながら、ぶっつけ本番でカウントダウン。
「行きますよー!みなさん、ぶどうの準備はいいですかぁ?」
そう、スペインではカウントダウンにあわせて
「10粒のぶどう」、それも大きなマスカットを飲み込むのだ。
のどに詰まらせないよう、年越しも大変なのである。

「フェリス・アニョ・ヌエボー!」
テーブルから立ち上がって、キスと抱擁の嵐。
その間、わたしたちは超特急で「ディスコタイム」の用意。
「さぁ、みなさーん、踊りますよ~!」
新年明けてからの音楽は、超のりのりのラテン音楽。
サルサ、メレンゲ、サンバ、マンボ、ルンバ・・・
お客さんはわらわらとテーブルから立ち上がり
恍惚の表情を浮かべて、踊りまくる。新年の初踊り。

「もも、あけましておめでとー」
べラが、シャンパンのグラスを持って現れた。
レストランのスタッフも飲む、これぞスペイン。みんな笑顔。
「べラの鐘、よかったよー」
「今年もいっしょに、いろんな曲を弾いていこうね!」
わたしたちスタッフは、お客さんから20分ほど遅れて新年の乾杯と抱擁。

外に出ると、爆竹が鳴っていた。
「今頃、鳥かごのすみでおびえているかなぁ・・・」
オウムには明日、新年になったことを教えてあげよう。

 

Facebook にシェア
[`google_buzz` not found]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です