【一日一作プロジェクト】「ふたひと」を作った。いよいよ出発。夜中の2時半、ええいっとベッドから起き上がる。身支度を整え、オウムとお別れ。
「スーツケース(大)、バッグ2個、段ボール箱、機内用スーツケース(小)」
を、ずるずると引きずりエレベーター前へ。これだけですでに汗がじんわり。いったい全部で何キロあるのか。
「23+23+23+23+12、ってことは・・・」
えっ、うそ。合計104キロ!夜中の2時半に、やる作業じゃないよなぁ。体もびっくり。ふだんなら、思いもしないのだけど
「エレベーターが壊れていたらどうしよう」
などという不吉な想像が(笑)。地獄の階段5往復?(こんな時間にお隣さんを叩き起こすわけにもいかないし)。そっとボタンを押すと
「動いてる〜」
すでに感謝。エレベーターの中へ荷物を運び込み、また1つずつ運び出す。さらにマンションの玄関まで1つずつ引きずって。すっかり汗だく。その時、思いがけない救世主が!
「僕がやりますよ」「えっ」
その声に顔を上げると、タクシーの運転手さんがニコニコ笑いながらが立っていた。お兄さんは私の手から、すっとスポーツバッグを取り上げると、次々と合計104キロを車に積み上げた。
「あ、あ、ありがとうございます!私1人だったらとても」
思わず涙目でお兄さんを拝む。「運ぶ」ことはできても「積み上げる」ことは、その数倍の筋力が必要だ。
「慣れてるから大丈夫です」
そのうえ陽気で人懐っこくて。空港までずっとおしゃべりしながら、誰もいないセントロを駆け抜ける。お隣さんにタクシーの予約をしてもらって、本当によかった。親戚だから話も聞いているんだろう。
「日本に一時帰国するんだってね。やっと家族に会えてよかったね」
なんだか友達に迎えに来てもらったみたい。思いやりのあるお兄さんの言葉や笑顔に、心が温まる〜。なんと20分でマラガ空港に到着。早っ。
「ありがとう!あなたがいてくれてよかった」「こちらこそ。いい旅を」
思いっきりチップをはずむ。これから再びカートに荷物を1つ1つ載せる作業が。気を引き締めてタクシーに背を向ける。と、その時。お兄さんがタクシーからさっと飛び降り
「大丈夫、僕がやるよ。君1人じゃ無理だ」
あっという間に荷物5個、合計104キロをカートに山積みしてくれた。おおお〜〜〜(涙)。キリスト像のように、お兄さんを拝んでしまった。後光出てる〜。
「ここからは1人、行くぜ」
カートを押して、搭乗手続きの窓口へ。夜中の3時前なのに、もうすでに人が並んでいる。そこで周りを見回し、はっとする。
「人だらけじゃん」
こんな時間でも、空港は大賑わいなのだった。私が寝ていただけで。多くの人々が国際移動していたんだ〜。もっとひっそり、閑散とした空港をイメージしていた。
「次の方、どうぞ」
搭乗手続き、書類の確認は、ささっと5分でクリアー。幸先よし。次はお待ちかねの荷物預け。これが終われば、やっと身軽になれる。スーツケース、スポーツバッグ・・・そこで突然、異変が起きる。
「段ボール箱の中身を確認します」「えっ⁉︎」
開けるの?箱全体をぷちぷちで巻き、さらにヒモでぐるぐる巻きにしてある。これを開けるの⁉︎
「今ここで?」「いえ、アドゥアナ(税関)へ行ってください」「はっ?」
なにやら雲行きが怪しくなってきた。すでにドタバタの予兆。はたして(明日に続く)。
★作品紹介「ふたひと」。この世の全てはふたつでひとつ。動と静、光と闇、歓びと悲しみ、出会いと別れ、始まりと終わり。「ふたつでひとつ」からの造語。