27.大須芸者とお座敷遊び

川端先生のご尽力により、大須商店街の一角から発見された「手裏剣」は
お店の壁際に置かれた陳列「ガラスケース」の中に、
そっと、たたずんでいた。
まるで、このために大須を訪れた「忍者フリーク」か「外国人」を
そっと、待っていたかのように。
「ああ~、ほんと!手裏剣だぁ」
「ほんとに、あるんだ~、ねぇ!」
と、大騒ぎしたのはクロさんとわたしで
べラは無言のまま、ガラスケースに近づいて行くと、最後の一歩のところで
「ぐいいっ」
と、わたしたちを押しのけ、手裏剣に歩み寄った。その目が、
「お土産として、買うのではない」
と言っている。
「外国人」だから買うのでなく、「忍者好き」なのだ、と。

「よかったねぇ、手裏剣あって。3種類あるよ、デザイン」
「500円だって。いい値段だよねー」
などと横でコメントするわたしたちをまったく無視して
「触ってみたい・・・」
と、べラはつぶやいた。
「手ごたえや重さを見たい」
そんな客いるのか~、と思ったが、ここは外国人。
「いいですよ」
お店のご主人は、気前よくケースを開けてくださった。

手のひらに「手裏剣」をのせ、手ごたえや重さを確かめたあと、今度は
「この素材は何なのか」
お店の人に聞いてくれ、と言う。
「ええ~っ、500円なんだから、もう買えば」
と思ったが、納得しないと前にすすまないのが、べラなのだ。

結局、「ひとつ」を購入。
表には出さないが、静かにひとり、喜んでいる様子。やれやれ。
後日談だが、この「手裏剣」は現在、べラの「寝室のサイドテーブルの引き出し」に
そっと、しまわれている。
「なんで、こんなところにあるの?」
と聞いたら、真顔で
「寝込みを襲われたときのため」
って、忍者か。

この日は大須で「大なごや和文化祭」という催しが行われていた。
わたしたちはさっそく、会場である万松寺に向かう。
これも、クロさんが事前にチケットを取ってくれていたおかげで
わたしたちは1000円で「大須&日本の古典芸能」を楽しめることになったのだ。
万松寺に着くと、着物姿の「お殿様」などもいて、いやおうにも気分は盛り上がる。
いっしょに写真なども撮り、べラは実に幸せそうであった。
そして、いよいよ中へ。

歌、古典楽器の演奏・・・、次から次へとアーティストが舞台に上がる。
歌詞はわからないはずなのに、べラはとてもいい!と、真剣に聴き入っていた。
そして、いよいよ「大須芸者」の登場!となった。
「うおおぉ~っ」
と、思わずうなり声が上がるほど、芸者さんたちは美しかった。
昔は200人近くいた大須芸者は、今はわずか数人ということだった。
着物姿、結った髪の美しさ。お化粧。動き。踊るときの体の線。
なにもかもが、ため息が出そうなくらい、美しい。
数人いらっしゃる音楽家たちがみな生音、生演奏、ってところもすばらしい。

こういうのをまじかで見ると、
「ああ~、芸者さんになってみたい!」
と、思う。芸者さんになって、スペイン語でお座敷に出たいなぁ。
日本の文化を伝えながら
「オ~レ!」
って舞台で決めたい。名前はそうだな、「もも吉」なんていいな。

などと、うっとりしている横で、べラは必死でシャッターを切っている。
が、なにしろズームがないので(使えないので)
芸者さんの姿は、豆粒のようだ。
なんとか、もう少し近くで見られないものか・・・
そう思ったとき、信じられないことが起こった。
「これから芸者さんと、お座敷遊びができますよ!ぜひやってみたいという方は?」
司会者が客席の方をぐるりと見渡す。
「もも、まさか・・・・」
べラがいち早く、わたしの顔色をうかがう。
「芸者さんとお座敷遊びができるなんて、もうこれ一回きりだよ!すごいっ、ねえっ!」
言葉を失っているべラを置き去りにしたまま、わたしは立ち上がった。
「参加させてくださ~い!、お願いしまーす、スペインから来ましたーっ!」
椅子に固まっているべラを、無理やり立ち上がらせると
「ほほ~っ」
という静かなざわめきとともに、会場はすぐに「受け入れ態勢」となった。
「だいじょうぶ!荷物見てるから」
クロさんも状況をすばやく判断して、背中を押してくれる。
「でも、もも・・・あんな遊び、僕知らないよ」
べラはまだ、もごもご言っていたが、
芸者さんの前に引き出されると、日本語でおぼえた挨拶をすべて忘れ
「うあ、あぅ・・・・」
と、緊張で身をちじめていた。

「こんぴらふーねふね、ひゅらひゅひゅひゅ~♪」
芸者さんと向かい合い、いざ「お座敷遊び」の始まりである。
やったことがない、とはいえ、けっこう上手にやっている。
わたしこそ、お座敷遊びしてみたかったなぁ~と思いながら、写真を撮る。
実際は負けると「お酒を一杯、飲まされるらしい」が、
べラは立ち上がると、会場に向かってそっと頭を下げた。
「ありがとう、ありがとう」
と拍手の中、べラは恥ずかしそうに笑っていた。

そのときの写真が、これである。
1枚目と2枚目が、芸者さんとのお座敷遊び。
3枚目が、大須観光をガイドしてくださった、左より川端先生、べラ、万松寺の殿、
ちなつさん、わたし(もも)、クロさん。
ほんとうに、ありがとうございました。

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「27.大須芸者とお座敷遊び」への4件のフィードバック

  1. 芸者遊びはなかなかできない経験なので、ほんと、体験できてよかったねぇ。しかし、手裏剣は寝込みを襲われたときのための道具ですか。ほぉ。あれ、刃がない気がするんだけど、あるのかな。

  2. ベラに聞いたら
    「本物はもっと重いよ」と言うので、
    「えっ、本物、知ってるの?」と聞き返したら
    「友人がインターネットで買って、いっしょに板に向かって投げた」
    とのこと。
    というわけで、次回は伊賀・忍者村で「体験忍者」ですかね。

  3. 「体験忍者」ではなく、「忍者体験」でしたね。
    語順がスペイン語になってました。あやや~。

  4. そうですか。ベラは本物を知っているですか。面白いなぁ。ベラ。

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