バルセロナへ飛ぶ

先週の土曜日から、ノンストップ状態が続いている。まず土曜日は朝から「Tシャツと布用絵の具」を買いに走り、家に帰るや「Tシャツペイント」を開始。

この土日に、展示会「ベガムール」の方向性を決めるため、またDMハガキの素材(作品の写真)をクロ隊長と決め、デザインを進めるため、なんとしても土曜日がカギ。なのであった。

で、ずっと立ちっぱなしでペイントを続け、夜の八時。ひと休みしようと思ったら、電話が鳴る。メッセージが主流の今、電話が鳴ることは非常に珍しい。

「あれ、どうしたの?マリ」
バルセロナの住む私の古い友人ルイス。その奥さんのマリだった。聞けば、療養中だったルイスの容体があまりよくない、と言う。

五月の誕生日に会いに行くはずが、扁桃炎で泣く泣くキャンセル。で、六月末に改めて会いに行く予定であった。

本人とかわり、電話で話をする。
「プリンセサ・・・」
いつも私を「お姫様」と呼んでくれるルイス。

その声が、いつもとちがっていたことで、私の心は一気に引き締まった。
「すぐにそっちに行くから。明日バルセロナに行くから!」

それをマリにも告げると
「明日の便なんてあるの?もう夜の八時だけど」
「わからないけど、今すぐ探してみるから待ってて」

あわてて電話を切り、パソコンのスイッチを入れる。いつもなら「安いチケット」を探す余裕があるが、もう数時間後のことなので、値段より時間が優先。

当たり前だが、ものすごい値段のチケットしか残っていない。さすがに一瞬、汗が出る。ちょっと足せば東京にも行けそうだ。

「でも、ルイスに会いたい。抱きしめたい」
その思いでいっぱいだったので、迷わず購入。考えることは何もない。ボタンをクリックさえすれば、それでいいのだ。

「マリ、ルイス、チケット買ったから。明日そっちに行くからね!」
「本当に?うれしいよ。待ってるよ。プリンセサ・・・」

さっきまで
「声が聞ければそれでいい」
と言っていたルイスの口調が、はっきりと変わった。
「ウイスキー準備して待ってよ、ドゥーケ(公爵)」

いつもの呼び方で、いつも口調で話しかける。彼はユーモアが大好きなのだ。
「もちろん。最高級のウイスキーを用意して待ってるよ」
唇のはしに笑いをにじませる、いつものルイスの顔を浮かんだ。

それから、三日間家を留守にする準備が始まった。すでに夜の10時すぎ。

まず「オウムの世話」をお隣さんのドリーさんにお願いする。
「大丈夫。任せて。安心してバルセロナへいってらっしゃい」

そして空港へは、友人のカルメンが車で連れて行ってくれることになった。

さらに、月曜日、火曜日のレッスンをキャンセル、別の日への振り替え作業を行う。

夕食を食べてなかったことを思い出したが、もう料理をする気力もない。ヨーグルトやバナナ、チーズをかじっていたらハビーからメッセージが入る。

「航空会社のアプリをダウンロードして、オンラインチェックインをした方がいい」
「明日、空港で搭乗手続きするよ」
「オーバーブッキングだと乗れないよ」
「ええっ・・・」
「絶対に行きたいなら、今やった方がいい。教えてあげるから」

なんとか、アイフォーンでオンラインチェックインに成功。そんなこんなで、気がついたらもう夜の1時。それからやっと、小さなスーツケースを引っ張り出す。

身も心もくたくただったが、みんなに守られ、支えられて生きている。そのことを強く実感。

そして何より
「ルイスに会いたい」
その思いに、私は支えられていた。

そして日曜日。一路バルセロナへ向かった。
(明日に続く)

★写真は先日飲んだ「バラの花びら入り紅茶」。香りがすばらしく、まるでお姫さまのような飲み物に。香りは瞑想ですね。



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