創作ラストスパート

スペインでは12月の6日と8日が祝日。で、土日もからめて先週は
「ものすごい連休」
となった。そのうえ、連日晴天。20度を記録。暑っ。

というわけで、うちの「レッスン」もお休み。とはいえ私は
「展示会に持って行く絵の最終段階」
にさしかかっているので、必死。なんてものじゃない。ラストスパート。猛ダッシュ。これすべて、日本行きの飛行機に乗るため。

この連休にやらなかったら、終わりだ。作品は完了しない。
「連休すべての時間を絵に!」
この決断。というか、必要によって、連休に入っていた全ての予定はキャンセルされた。

「今年最後のランチやディナー」
「一足早いクリスマス食事会および忘年会」
は、一つ残らずキャンセル。

こんな非常事態はまれなのだが、今期はピアノ教室に加え、アート&日本語教室が増え
「平日はレッスンで創作時間が全く取れない」
「秋の発表会まで超忙し」
だったことが、響いた。

だいたい11月に入ったとたん、どうにも時間が捻出できず
「カスタネットおよびテニス教室」
は中止。残念だが仕方がない。体は一つなのだ。

というわけで、飛び石連休はすべて
「創作」
に費やされた。やるときは、やる。それも徹底して。

食べる、寝る。以外はずっと作業場にいる。ほぼ立ちっぱなし。か、歩き回っているか。

陽が昇るとともに描き始め、昼食は絵の具の間で。第一、第二の絵の具を乾かしている間に。だから、時計とは全く関係ない時間に食べる。

しかし、心配はいらない。このような「緊急体制」に入ると、あまりお腹はすかないのだ。人間の体は
「大事に集中する」
ようにできている。

トイレに入り、ふと鏡を見れば、髪の毛まで絵の具がついている。その時であった。
「ルルル・・・」
と、珍しく固定電話が鳴った。

「シィ・・・」
出れば、ハビ吉。聞けば、ダビー&お母さんも一緒だと言う。
「今から十分でそっち行くから」
「はっ?」
「ランチまだだよね」
「・・・どころか、料理もしてないよ」

結局、うちのすぐ前の魚介類レストランで急遽ランチすることになった。
「空いてるのは、夜の八時過ぎって言ったじゃん」
「ごはんちゃんと食べないと、体に悪いよ」
「・・・・・」

で、テラスランチ。いきなりビールなど飲んで。ところが、身も心も「創作モード」に入っているので、まったく頭が回らない。会話についていけない。

手だって、絵の具だらけ。だいたい写真を撮ることさえ、こうしてすっかり忘れているのだ(というわけで今回は写真なし)。

ビールを飲んで料理を待っている間、ふわ~っと気持ちよくなり深呼吸をしていると
「もも!寝てるっ」

そうか。寝てたんだ。お日様に当たって、ビールなど飲んで。これが連休の正しい過ごし方だよなぁ。魚介類に舌鼓し、おしゃべりしていたらあっという間に二時間。

「あ、もう帰らなきゃ」
「どこに?」
「うちに。日が沈むまでに描かないと」
「ここ数日、ずっと家にこもりっぱなしだよ」
「でも、月曜日からはレッスンがつまってるから」
「・・・・・」

その瞬間、ハビ吉の顔色が変わる。
「これからみんなで僕の家に行って、おやつして、暖炉に火をつけて夕食するんだよ。もも、夜は空いてるって言ったじゃん」
「言ったよ。でもランチしちゃったから、逆に夜は働かなきゃいけなくなった」

数秒、ハビ吉は黙りこくっていた。そして口を開けるや、ものすごい勢いで私を責め出した。
「これが最後の休みの日なんだよ。みんなで一緒に過ごす今年最後の日なのに!」
「だって・・・」
「ももの大好きなジントニックだってあるよ。なのにこれから家に帰るの?」
「・・・・ごめん。でも、本当に描かないと間に合わない」

その時、ダビーがするりと間に入り
「展示会の成功を祈ってるよ」
と、空気を変えた。

「ごめんね」
「しょうがないよ。でも、僕たちをこうして無視してないがしろにするももの態度は、また改めて話し合わないとね」
「はぁあっ?」

私はただ、必死に仕事をしているだけだ。と言い返そうとしたその時、ダビーが真面目な表情で言い放った。
「一つ、言っておきたいことがある」
どきん。とした。これで友情にひびが入るなんてことは・・・

「なに?」
「いつかももが、アーティストとして有名になって、大金持ちになっても・・・僕たちのことは忘れないでね」
「・・・・・」

あまりのことに、唖然として突っ立っていた。
「ゲロを吐いてるももを、介抱したことも忘れないでよ」
ハビ吉が付け足す。

あまりの展開に、言葉を失ったままそれでも
「今年もありがとう」
と、しっかり肩を抱き合って、別れた。

ここまでして、描く。それが私の生き方だから。ピアノと同じ。
「アートを私の生活、人生のまん中にすえて生きる」
と、決めたのだ。二十年前に。スペインへ渡った時に。

だから貫こう。そんな私にあきれながらも耐えてくれる、貴重な友人たちに感謝して。

★せっかくなので、先日食べた「麺もの」写真を紹介します。中華料理店でひとり麺。熱々でおいしかったな~。

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「創作ラストスパート」への2件のフィードバック

  1. 麺 ものすごく美味しそうです!!!!
    引き留めてくれる、押しかけてくれる友人、本当に素晴らしいです。ずかずか入ってきれくれても、ぶつかっても、それでも繋がっている友情。ものすごくいいなぁっていつも思います。私もそういう人間関係を作っていきたいなぁ!私は来週1週間だけマドリード帰れます!
    楽しみで仕方がありません!

  2. まあ、Sさん!マドリッドに!!!
    クリスマス前で盛り上がってますよ。イルミネーションもきれいー。お友達と楽しんで下さいね。
    すばらしいマドリッド滞在になりますようにお祈りしています。

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