12.大阪行きのひかりで再会

昨日の続き。無事ニッポンに上陸したハビ吉&ダビーは、完全に睡眠不足。時差でへとへとのまま東京駅へ。それでも新幹線および指定席のチケットを購入した。というところで、アイフォーンがピンと鳴る。

「これから、ももに言われたひかりに乗るよ!」
メッセージの吹き出しは、ニコニコマークがついている。
「ムイ・ビエン!(よかった)」
彼らが言うと、「HIKARI」の「KA」にアクセントがつくので、つられて私までそうなってしまう。すると、続けてダビーの吹き出しが訴えてきた。

「冷房で昨日からのどが痛くて。何か薬を持って来て!」
「わかった」
するとハビ吉まで。
「朝食を食べる時間がなかったから、食事を持って来て!」
あのねぇ。

だいたい彼らは六歳も年下なので、私からすると完全に弟。再会の感動より、まずは薬と食事の調達なのだ。
「あ、それからビールも。冷たいヤツ」
「・・・・・・・」

のどが痛いのではなかったか。これすべて、当日の朝の連絡。出発準備で忙しいこの時に。とりあえず、豊橋の駅ビルですべてを調達することに。薬&弁当を購入。父も新幹線のホームまで、挨拶&見送りをしに来てくれることになった。

「豊橋~、豊橋~。黄色い線の内側まで下がってお待ちください」
「ちゃんと乗ってるかなぁ」
父と二人、目を皿のようにして窓から車内をのぞく。その時、私たちが待ち合わせた車両で、元気よく飛びはねる外国人の姿が・・・

「あれじゃない!そうだ、ハビーだよ」
父が嬉しそうに声を上げる。
「いた・・・」
安堵感で、おもわずため息。停車時間が一分なので、降りる人を待ってあわてて乗車。その時であった。
「あっ、もものお父さん!」

ハビ吉が私の脇をすりぬけて、ホームに降りて行った。
「ちょ、ちょっと!ダメだって。早く乗って。すぐ閉まるんだからっ」
スペインの数分停車とは、わけがちがう。

「ハビー、早く乗って!」
父も形相を変えて叫んでいる。が、日本語がわかるはずもなく、結局無理矢理腕をつかんで、車内に引きずり入れた。
「ちょっと!降りないで、って言ったよね」
「せっかくお父さんに挨拶しようと思ったのに」
「二人で豊橋に残りたいのっ」

感動の再会劇はどこかに吹っ飛び、私たちはいつものように言い合いになっていた。ホームの父に三人で手を振りながら、いざ発車。大阪へ向かって出発。

席に座ると、やっと嬉しさがこみ上げて来た。
「はい、薬。それから食料、とビール」
「ムーチャス・グラシアス!」
「サルー!」
まずは、ビールで乾杯。

「ももー。ニッポンって、日本人ばかりなんだね」
「そりゃ、都会や観光地は別にして、ふつうじゃない?」
確かにマラガは、外国人がとても多い街だ。十分も歩いていれば、必ず外国人に出会う。くらいの確率。こっちの方がすごいのだ。

「今、わかったけど、ももって日本の女の人と動きがちがうね」
「そう?何が」
「表情とか、歩き方とか」
「声の出し方も」
「そうそう。腰に手を当てて、僕たちに命令するしね」
「・・・・・」

二人は、非常に観察力がある。ことに、これから気づいていくことになるのだが、それはぼちぼち書いていこう。

大阪駅に無事到着。ここから乗り換えて「大阪城」へ。しかし、暑い。じとじと感も、豊橋よりずっと増した。風もないし。外堀からよろよろ近づいて行くのだが、天守閣になかなかたどり着けず気が遠くなる。

「キャッスル?これはお寺だよね?」
ハビ吉が怪訝な表情で聞いてくる。
「ううん、これはお城」
「寺院みたいだけど」

確かにヨーロッパのお城とは、ちがうかも。そうか。すべては比較の問題なのだ。ニッポン初上陸の目から見ると、不思議がいっぱい。なのらしい。

「すばらしい石垣だなぁ」
二人は、何より石垣に感動していた。お城より(笑)。
「あの、角の石がすごい!」
「インカの石垣みたいだ」

ヨーロッパの建築物は基本的に「石」。なので、よく見慣れているし、目も肥えている。マラガの中心部には今も、二千年近く前に造られた「ローマ劇場」があるのだ。

大阪城を出ると、まずはホテルへ。いったん休憩して「道頓堀」界隈を散策、そして夕食。いうのが本日のプラン。
「寿司を食べたい!」
「僕はお好み焼き!」
「でも、予算は一人20ユーロ」
「もも、頼んだよ」
「・・・・・・・・」

私だって、よく知らないのだ。マラガに住んでいるんだから。
「ま、歩きながら見つける、ってことで」
と、お茶を濁す。果たして、どんな大阪の夜となるのであろうか。

(明日に続く)

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「12.大阪行きのひかりで再会」への4件のフィードバック

  1. あ~っはっはっは、スペインに住んでるとアクションが大きくなるの、分かる気がします。スペインって底抜けに明るいイメージだもの。
    それに対し日本は謙虚で丁寧、頑張るイメージですよね。
    (私も日本にいるとちょっと堅苦しくなってしまいます)

  2. 新幹線を降りてから二人が
    「車内で誰も大声でしゃべっていない」
    ことを、驚いたように報告してくれました。

    確かにマラガはどこでも腹式呼吸&大声(一般人がオペラ歌手並み)。
    発声法がちがうのか、私もスペイン語になるといきなり
    スピードと音量、激しさが増します(笑)。

  3. 思い出しました。
    マクエダからマラガに行くバスの中がいつも賑やかだったことを。
    それにひきかえ日本の公共交通機関では携帯の通話も禁止って・・・
    (私はそれにはずっと前から疑問を持っています。携帯電話って携帯できるからいいんじゃない?それで通話ダメって、意味ないですよね~)

  4. スペインのバスはすごいですね。
    このネタだけで、一か月は書けそう(笑)
    だってもう、運転手さんからしてすごい(うずうず)
    ああぁ、マラガを舞台にいつか小説が書けないかなぁ。

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