3.隔離コーナー初体験

なんとか豊橋の実家に着いたものの、すぐさまベッドへ直行。この体のだるさ、節々の痛さはいったい何なのか。とても風邪とは思えない。「実はちがう病気なのでは」と、疑いたくなってくる。

これまでスペインで二十年近く、いつでもどこでも、どんな条件でも弾く「日雇いミュージシャン」をしてきたので、風邪ぐらいなら演奏する元気、いや気力はあった。が、どうしたことか。今回は体が持ち上がらないほど、ただただひたすら「へとへと」なのである。

「やはり、検査であろう」
自分でも「いかん」と思えるまで衰弱したので、父に豊橋市民病院へ連れて行ってもらうことにした。とりあえず総合内科かな。血液、尿などひととおりの検査をし、待合室で待っていると・・・

「あぁあ、きみどりさん!こんな所にいてはいけません!」
その先生の慌てようが、尋常ではない。
「インフルが出ました!さ、早くこちらへ」
慌てて人々がごったがえす待合室から、私を引き離す。

先生に案内されたその「場所」は、パーテーションで特設された「隔離コーナー」だった。もちろん初めて。私一人。貸し切り状態。こんな場所で診断結果を聞くなんて、想像もしていなかった。先生はていねいに
「すぐに家に帰り、熱が下がって三日過ぎるまでは、外界と接触を持ってはいけない」ことを伝えてくださった。そして
「発症してから時間がたっているようなので、もうピークは過ぎているでしょう」
と、不思議な予言でしめくくった。

実家に戻り、またパジャマ生活が再開。しかし、自分がインフルエンザとわかっただけでも「あーよかった」半分くらい治った気がする。薬もないので「安静」しかなく、ただ「だらだら」していればいいのだ。そしたらなんだか、急にお腹がすいてきた。

「何か、食べたいものある?」
さっそく父が聞いてくれたので、私は脳裏に浮かんだその、ヌルヌルと怪しく光るおいしい食べ物の名を、つぶやいてみた。
「うなぎ・・・」

一時間後に届けられたウナギは、涙が出るほどおいしかった。そして丸一週間に渡るパジャマ生活で、一キロ半痩せてしまった。熱も下がり、食欲は戻ったが、どうにも体のだるさが抜けず
「いったい私の、ニッポン滞在はどうなってしまうのか」
と思うと、涙が出そうになる。

なにしろ、半年前から楽しみにしていた「クリスマスの箱根旅行」を、泣く泣くキャンセル。そしてあさってからはいよいよ「名古屋三連泊」が、待っているのである。はたして・・・

★写真は豊橋にある「万場調整池」。天気がよかったので父とドライブ。

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「3.隔離コーナー初体験」への1件のフィードバック

  1. ああ、「万場調整池」。鹿島建設に勤務してた時、工事中でした。仕事で現場訪問した時は何もないところでしたけど。懐かしいなぁ。

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