ストーブを緊急購入

ここのところずっと「最高23度、最低12度」のぽかぽか陽気が続いていたマラガ。なのに、いきなり冬が到来。
「なんでいきなり、最高17度、最低6度になるわけ?」

その答えは、ない。が、ニュースでもやけに緊迫した調子で
「寒くなるので、みなさん気をつけてください!」
と訴えかけていたので
「うーむ、これは暖房の準備をせねば」
と、ストーブを引っ張り出した。

が、三十分のすったもんだの後、壊れていることが発覚。20年活躍してくれたのだから大往生。感謝の気持ちでいっぱい。ではあるが、ぼやぼやしている暇はない。

もう、寒気はすぐそばまで来ているのだ。
「ストーブを買いに行こう」
週末を返上し、大型電気店を数軒見て回る。友人たちにも相談。その結果

「広いリビングには、強力なガスストーブ」
「狭い寝室やピアノ室には、安全な電気ストーブ」
という結論に至る。

「電気ストーブ」は、すぐにいいのが見つかった(写真二枚目)。今月のおすすめ品、59ユーロを購入。かなり重いが、家まで運んでくれると言うので問題なし。

ところが、すぐに問題が浮上。
「ガスストーブも買いたいんですけど」
「うちにはガス、置いてないんですよ」
「ええぇっ」
「すみません」

よくよく見れば、大型電化店。そう、電気用品が主なのだ。ガスは言ってみれば敵。である。

しかたなく、他の店へ三軒回るが、信じられないことに
「最近ガスは人気がなくて」
と、ほとんど見つからない。あっても見たからにイマイチで
「これならうちの二十年前のストーブの方がましじゃ」
というような代物。

疲れ果ててバスに乗り、家へと向かう。その時
「あ、うちの近所の電気屋さんはどうだろう?」
エル・パロ地区では一軒しかない電気屋さん。でもお兄さんが親切で、時々お店をのぞいてみたことはある。

「行ってみるか」
バスを少し手前で降り、お店に踏み込む。
「ガスストーブありますか」
「ありますよ。これなんかおすすめです」
「おぉおっ!」

一目ぼれ。こういうのを探していたのだ。軽くて頑丈でシンプルで。ただ、問題は・・・
「自分でガス栓につなぐパーツを買って、取り付けないといけないんですよね」
「カンタンにできますよ、説明してあげます」

「あ、でも、私にはで絶対無理です。あのー、取り付け代を払うのでやってもらえませんか」
「うちではやってないんですよ。旦那さんにやってもらったら」
ベラを知るお兄さんは、お茶目な笑顔を浮かべて言った。

「それが、あの、旦那さんもういないんです」
「えっ・・・」
驚いたのは、お兄さんの方である。
「亡くなったんです、二年前に」
「・・・・・・」

数秒の呆然&沈黙の後、お兄さんの態度および表情は、まるで別人のように変わった。
「わかりました。僕がやります。パーツだけ買ってきてもらえますか?うちもガスストーブだから、こんなのお茶の子さいさい」
「グラシアス!今すぐ買って戻ってきます」

かくして、お兄さんと私はチューブや金具やドライバーを手に、床にひざまづいて
「取り付け作業」
を、人々の行きかう店内で行った。

約20分ほどで、取り付け作業は無事終了。
「こんなの、私一人だったら、絶対できなかった・・・」
素直に私は感想をのべた。だいたい出だしの
「ガスチューブを力づくで管にはめ込む」
ところで、すでに絶対無理。である。

「これは、きついなぁ」
とつぶやくお兄さんの、腕の筋肉が目の前でモリモリと盛り上がり、フルフルと震え、たらたらと汗が流れ出るのを見ながら
「このお兄さんに日本のお土産を買ってこよう」
と、強く思った。

で、購入したのがこちら(写真一枚目)。冬が来る前に、買えてよかった~。しかし、実はこのストーブ。私の細腕で、お店から家まで運んだのだ。

小さなお店なので、お届けサービスをしていないことは知っていた。その日はお金だけ払い、翌日コロコロのついたカートを持ってお店へ。もちろんスポーツウエア姿である。

ゴロゴロとスーツケースのように引きずりながら、ストーブを家へと運び込む。べラがいた頃は、何でもやってもらえた。それが今では、たかがストーブの購入でさえも一大イベント。

なんだかぐったり。息ははあはあ。すっかり汗びっしょり。またしても
「体は温たまったが、こういう温め方を期待したのではない」
と、スポーツウエア姿の自分を、不思議な思いで眺めた。


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