プラド美術館で「快楽の園」に再会

昨日の続き。マドリッド三日目。今日からハビ吉は仕事なので、基本的に自由行動。せっかく一人で過ごせるので、気兼ねなく「アート三昧」。

まずは、セントロへバスで。ひたすら裏通りを歩き回る。大通りから少し入り込んだ路地には、すてきなお店がいっぱい。地中海バカンスのマラガとは明らかに違う雰囲気、波動。色。シックでヨーロピアンなマドリッド。こんなレトロなバルもあり(写真一、二枚目)。

さて、今日のメインイベントは「プラド美術館」。さっそく乗り込むと・・・
「うそ・・・」
写真をご覧ください(三枚目)。すごい列。300メートルくらい、果てしなく続く行列。
「だめだ。私にはとても無理」

軽くあきらめ、近くのカフェテリアへ(四枚目)。最近スペインで人気のスムージー。セロリ、きゅうりなど緑の野菜をジューサーにかけてくれる。さわやか~。おいしー。

カフェテリアの窓から行く人人々を眺めながら、のんびり市内地図をチェック。今日はざっと十キロは歩く予定。

で、一時間後に「プラド美術館」へ戻る。いざ再挑戦。
「うそ・・・」
さっきの行列は、どこへやら。チケット販売窓口に近づくと、私の前に五人いるだけ。あぁあ、並ばないでよかった。

実は「プラド美術館」は、これで三回目。とはいえ、最後に行ったのがもうはるか15年以上前なので、ぼんやりとした記憶しか残っていない。その時、何より感動したのが、ヒエロニムス・ボスだった。

「快楽の園」の前に立った瞬間、感動。というか衝撃を受けて、しばし動けなかった。走り込むようにミュージアムショップへ。その時の私にはかなり高価だった「バインダー」を購入。

「快楽の園」が大きくプリントされたバインダー。それを両腕で抱きしめるようにして、美術館を出たことを思い出す。その思い出のバインダーはつい二、三年前まで、まだ使っていたが、さすがにボロボロになり手放した。

今回は時間に余裕があるので、じっくり見るつもりで入場。エル・グレコ、ゴヤ、ベラスケスの「ラス・メニーナス(女官たち)」・・・すばらしいコレクションの数々。三時間ほどかけてじっくり堪能。残念ながら撮影禁止なので写真なし(涙)。

そして。ついに、やって来た。ヒエロニムス・ボスの前に。「快楽の園」が、腕を広げて待っていた。ように感じられた。
「あぁあ・・・」
その瞬間、不思議なことが起こった。心がわしづかみにされ、息もできないほど吸い込まれ立ち尽くす。目が完全に見開いて、まばたきさえできない。それは十五年前の自分と、まったく同じだった。

「同じ作品に同じように感動する」
ことに、私は驚いていた。これだけあって。何百枚もあるのに。世界の名作が。なのに、私の心は同じものに、同じように動いたのだ。

何度も何度も、見る。少しずつ。そして全体を。また近づいて。一つ一つの場面に目を奪われながら。結局「快楽の園」の前に、三十分くらいいた。その間に少なくとも三回は、団体旅行客が入れ替わった。

すっかり満足して、プラド美術館を後にする。
「自分の世界をとことん描こう!」
心が熱く燃えていた。とことん。だからたどり着ける世界がある。

さて、本日の二つ目のイベントは「ヌエボ・アポロ劇場」。初めてなので地図を頼りに、途中三回くらい迷いながらやっと到着(六枚目)。なにしろ
「ロシア国立バレエ団による『白鳥の湖』のバレエ公演がある!」
のだ。それも明日で終了。何としても明日のチケットを入手したい!

「あれ・・・閉まってる」
案内板を見れば、午後五時からチケット窓口は開くそうな。ま、それはいいとして、問題はチラシの上に書かれた文字。
「ENTRADAS AGOTADAS(チケット完売)」
って、ほんと?もう一枚もないの?

コーヒーを飲んで、再び窓口へ。並ぶこと20分。やっと私の番。ダメもとで聞いてみる。
「明日のチケットありますか?」
「何名ですか?」
「一人です」
「だったら・・・ありますよ」

座席表を見せてもらい、舞台から一番近い21列目をゲット。
「うれし~」
感激しながら、セントロをそぞろ歩く。ソル駅の前では「メキシコのマリアッチ」がライブ演奏中(七枚目)。すてき~。

彼らにチップをあげると、どうなるか。その貴重な瞬間を目撃したので紹介します(八枚目)。
「メキシカン帽子をかぶってマリアッチ軍団と写真が撮れる!」
いいなぁ。私もしたかったけど、一人だから写真を撮ってくれる人がいないし(涙)。

この日のランチはシチュー、肉団子、リンゴのオーブン焼き、パン&ビールで9ユーロ(九枚目)。大満足。

歩き疲れて家に帰ると、夜九時。ハビ吉はまだ仕事中。なので、ササッと夕食を作り、明日のプランを地図で確認。すると十二時近くになって、やっとハビ吉が帰って来た。

「疲れた~。もう死にそう~」
「おかえりー。今日の仕事どうだった?」
「それが・・・・」
私の顔を見るや、ものすごい勢いで「今日の出来事」を語り出すハビ吉。それがあまりに必死の形相なので、しばらくしてから口をはさむ。

「あの、とりあえず靴脱いだら?」
「靴を履き続けて15時間以上!」
「だから、脱ぎなさいって」

それだけ疲れているのにもかかわらず、ハビ吉はうれしそうに大きな紙袋を二つ、私に向かって差し出した。
「はい、お土産」
「なに、これ」
「接待ですごい料理があまったから、詰めてもらった」

その量が、半端ではない。名古屋の結婚式の「引き出物」くらいはある。中をのぞくと、肉、魚、チーズ、ハム、デザート・・・どう見ても六、七人分。

「僕は明日もあさっても仕事でいないから、ももが食べてね」
「・・・・・・・」
この食料。いったい、どうするのか。
(明日に続く)

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