年末大掃除は日本の習慣か

年末が近づくと、わたしは毎年、憑かれたように掃除を始める。
これまでのどんな掃除ともちがう、これは「年末大掃除」。
気の入り方がちがう。

まず朝、起きるや「ジャージ」に着替える。
お供えのお水とお線香をたいてから、一目散バケツ、雑巾に向かう。
ふだん動かすことのない家具、たなの奥、引き出しの裏まで動かすのだから
30分もしないうちに、汗が吹き出してくる。

イスに上ったり、降りたり、しゃがんだり、伸びたり、ちじんだり・・・
あらゆる動きが、掃除には含まれている。
これを朝9時から、お昼の1時間ランチタイムをのぞいて、夜の7時まで続ける。
翌日は決まって、全身筋肉痛。

でも、これが「年末大掃除」。
はぁはぁ言いながら、やる。
ジャージでないと、ぴしっと気合が入らない。
年末大掃除という「年末行事」には、崇高な魂でのぞみたい。
で、ジャージ。体育系だから。
だらだらして日常着として着られるジャージとは、入魂状態がちがう。

さて夕方、よろよろになってごみを片付けていると、べラがやっと口を開いた。
「こんなに一度にやらなくても・・もう夜だよ」
「だって、年末大掃除なんだから!」
「それって、日本の習慣?」
「えっ、 世界中じゃないの?年末大掃除」
「僕は知らないよ」
「・・・・・・・」

まさか。年末大掃除は日本の習慣なのか。
これをやらないと、新年がやって来ないのではなかったか。
べラの言葉で、急におなかがぺこぺこであることに気づき
ジャージのまま、よろよろと台所へ向かった。

~音楽と絵の工房~地中海アトリエ・風羽音(ふわリん)南スペインだより