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クリスマスの贈りもの

スペインではクリスマスから、ロス・レジェス・マゴス(東方三賢人のやってくる日、
1月5日の夜)にかけて、贈りものをしあう。
わたしたちは「記念日に贈りものをする」という習慣がなく
「必要なときにする」ので、どうも年中行事にうとくなっている。

それでもさすがに、このクリスマスからレジェスにかけては
「何か、贈ろうかな」
という気持ちが起こる。わたしたちは近所を散歩しながら
「じゃ、お互いに欲しいものを言って、今買おう!」
ということになった。

「わたしはねぇ~、ええーと・・・」
と、欲しいものを考え始めるや、べラが待った!をかけた。
100均の黄色い小銭入れの中身を確かめながら
「あ、ひとり、2ユーロまでね!4ユーロしかないから」
「はあ?2ユーロ」
子どものおこづかいじゃないんだから、もっとたくさん持ってきてよ!と言いかけたとき
「この小銭いれは、のぶゆきさんに買ってもらいました」
とうれしそうにつぶやいたので、仕方なく言葉を飲み込んだ。

さて、2ユーロで買えるものは、少ない。
わたしは最初「花」にしようかな、と思った。テラスに飾れる鉢植えの花。
が、次の瞬間、頭をよぎったのは
年末大掃除をしていて発見した、たくさんのはがれもの。
そう、「接着剤」は、花よりも今すぐに必要なのであった。

その辺りをうろうろしていたべラが戻ってきた。
「もも、決めた?」
なんだか、とてもうれしそうである。
「僕ね、2ユーロで『くじ』を買うことにしたよ。当たれば、億万長者!ももは?」
「わたしはね・・・ボンド。ちょうど2ユーロだし」
「ボンド?・・・」

クリスマスのこの時期になると、いつも思い出す「物語」がある。
オー・ヘンリーの「賢者の贈りもの」。
「互いを思う気持ちが、最高の贈りもの」というメッセージを
オー・ヘンリーはクリスマスが近づくたびに、わたしたちに投げかけてくれる。

たった2ユーロの贈りもの。
でも、わたしは忘れないだろう。
リボンも包装紙もない、この贈りもののことを。

ふたりでエル・パロの海岸通りを、散歩しながら帰った。
夕暮れになると、南西の空に「金星」が現れる。
まだ、どんな星も姿を現さないうちから
朱色の空の中、けして輝きを失わない、ひとりぼっちで輝く星。
「あの明るい星をね、お母さん、いつも洗濯しながら見ているんだよ」
と、母が言っていたのを思い出した。