ロンドンからやってきたダビー

20年来の友人のダビーが
ロンドンからマラガにやって来た。
一週間の滞在なので、なかなか忙しそう。

彼はマラガっ子なのだが
仕事がロンドンなのでもう数年
マラガとイギリスを行き来する
生活をしている。
これは、ヨーロッパ圏では
非常に「よくあること」で
私の周りを見回しても半分以上は
「外国で仕事」をした経験がある。

ヨーロッパに住んでいると
「外国」という感じはあまりせず
「お隣さん」感覚である。
テレビのニュースでも
ヨーロッパのニュースは毎日報道される。

「ヨーロッパ圏の中のスペイン」
「同じヨーロッパの仲間」
という意識が
スペイン人には当たり前に備わっている。

実際、ヨーロッパ間の国際線の移動は
飛行機で2~3時間なので
国内を車で移動しているより
ずっと早い。

さて、前置きが長くなったが
ダビーとうちの前の海岸通りに並ぶ
魚介類レストランでランチをしながら
お互いの近況報告。

ダビーは、世界中を旅するのが趣味で
訪問した国は、100国以上。
「行ったことのある国」を塗りつぶした
世界地図を持っていて見せてくれたが
もう、行ったことがない国の方が
少ないのだ。

「プエルト・リコにパポ・ルッカに
会いに行きたいんだけど」
ダビーが眉間にしわを寄せる。
「もう5回、行ったけど好きじゃないな」
「5回も!」
「見た目はカリブ、ラテンだけど、メンタリティはアメリカ」

ダビーはスマートフォンをいじくりながら
「プエルトリコの友人に今、聞いてあげる。
誰だって?パポ・ルーカス?」
「パポ・ルッカ!」

すぐさま、返事が返ってきた。
「超有名なピアニストでもちろん知っているが
プエルト・リコのどこに住んでいるかはわからない」
とのこと。

プロフィールを読んでいたダビーが
大きなため息をもらした。
「もも!こりゃすごい人だよ。
ピアノレッスンなんかしてくれるわけない」
「どうして」
「グロリア・ステファンとかのアレンジしてるんだよ」
「だから」
「どうやって、お願いするつもり?」
「スペイン語で」
「・・・・・・」

ダビーは、しばらく言葉を失っていたが
ベラのそれとは、少しちがっていた。
同じ20年来の友人、ハビーの名をあげ
「確かハビーは、プエルト・リコ好きだよ。
頼めばいっしょに行ってくれるんじゃない?」

ダビーがだめなら、ハビーか。
今度会ったときに、聞いてみよう。