誕生日にバイオリンを弾きたい

もうすぐ、べラの誕生日。
「いったい何を、贈ろうか」
手作り料理は毎日、一年中していることなので
何か、あっと驚くようなものがいい。

そのとき、ひらめいたのが
「バイオリンを弾く」こと。
今年は忙しくて、バイオリンはすっかり忘れられ
部屋の隅にぶら下がっていた。

去年、教えてもらったことを思い出し
テラスでキーキー弾いていると、べラが現れた。
「調律するから、貸して」

4本の弦は、これで正しく「ソ、レ、ラ、ミ」となった。
「弦はまだ早いよ。まずはピッチカート奏法で練習!」
いきなり先生の顔になっている。

「もっと力を抜いて」
「右手はもっと遠くに位置を取って」
「弾いても指は上げない、押さえたまま」
たった15分で、汗びっしょり。見かねたべラが
「暑いから、秋から始めたら?」

「だって、誕生日に弾きたいんだもん。プレゼントとして!」
「まさか、僕の?」
「そう!ハッピーバースデイの曲」
「一週間で?」

何事も、特訓。
そして特訓に必要なのは、それを「強く望む」ことなのだ。
心から望めば、何事も、苦行ではなくなる。
人生の不思議な法則である。

ちょっと弾けるようになったので、すっかりうれしくなり
ピアノ教室の子供たちをつかまえて、無理やり聴かせている。
そしたら、6歳のアジェレンちゃんに
「次のピアノの発表会で、いっしょにドゥオで弾こう!」
と誘われた。
いいかも。急に10月が楽しみになってきた。

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