この世の終わりか、XP(3)

やっと週末。私たちは心を決め、新しいパソコンを買いに
マラガでも有名な、大型家電ショッピングセンターへと向かう。
「今週の大特価!」ちらしを握りしめ、鼻息も荒い。
私たちにとっては大金の399ユーロ。
友人のS氏に、事前にレクチャーを受けての乗り込みである。
「ああー、やっとパソコンが買えるね」
心の底から、じんわり温かいものが湧き上がってくる。

豊かなニッポンにいると、当たり前かもしれないが
この不況のスペイン、それもアンダルシアに暮らしていると
周りには「パソコンを買い換えられない」人が、実に何十人もいる。

「周りに迷惑」なのは事実だが、
「時には家賃も払えず、食事もかなり質素」な暮らしで、
毎朝、起きれば職探し。
月々の保険料も払えない、つまり病院に行けない状態での
スペイン人の友人たちの生活を見ていると
「パソコンどころではない」

まず、食えること。屋根があること。
その次に、病院に行けること。
その事実がむきだしになった毎日の中においては
自然とプライオリティも変わってくる。

私自身、ニッポンで会社員をしていた頃は豊かだったので
「こんなこと、当たり前じゃん」
と思うことが、スペインに来てたくさんあった。
が、まさか自分がこんなに貧乏生活になってしまうとは
そのとき思ってもいなかったので
「やややー、常識というのはお国が変わればかわるのじゃ」
と、最近つくづく思う。

さて、お店に着くと、さっそく店人のお兄さんを呼んで
「このちらしの、東芝のパソコンが欲しいんですけど」
「あ、それね、もう全部売れちゃってないんですよ」
「ええーっ」
「でも、同じ値段でいろいろありますよ、たとえば・・・・」
お兄さんは、機関銃のように特価パソコンの特徴を
息つぎもせずに、説明してくれた。
専門用語と数字が羅列した文章は、私たちには外国語に聴こえた。
「で、こっちは・・・・で、・・・の容量が多く、・・・は・・・・なので速度が速いです」
止めなければ、このままずっと話していそうだった。
「あ、あ、あの、すいません、説明していただいてもわからないので・・・」
「はっ?」
「あのー、これとこれと、こっちのパソコンの差は何ですか」
「・・・・?」
「何がちがうんですか?どれでもメールとか、グーグルとかできるんですよね」

お兄さんは言葉を失い、文字通り、固まっていた。
さっき自分がした説明が、何の役にもたっていなかったことを知った驚き。
軽いショックが、お兄さんの表情から読み取れた。
「すみません。あの、友人と電話で話してもらっていいですか」
私たちはS氏に電話をし、お店のお兄さんと直接、話してもらうことにした。
二人は実にスムーズに、会話をしていた。
横で聞いていて、心が洗われるようだった。

話がつき、私たちは安心して新しいパソコン、399ユーロを購入!
記念すべき「Windows8への道」、第一歩を踏み出した。

(この世の終わりか、XP(4)につづく)

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