3粒のぶどう物語

先日、スーパーに食料品を買いに行ったとき
その小さな事件は起こった。

スペインでは、野菜や果物を買う場合
種類ごとに、自分の欲しい分だけ透明のビニル袋に詰め
係りの人に計量してもらう。
値段はキロで表示されているので、計量とともに初めて値段が示され
シールとして貼られる、というしくみである。

さて、その日もべラは、いつものように大好きなバナナを袋に詰めていた。
他にもトマト、ピーマン、リンゴ・・・など、計量してもらうものがたくさんあったので
わたしたちは計量係のお兄さんと世間話などしながら
気楽に値段のシール貼りを進めていた。
そのときである。
「あっ・・・」
お兄さんが、はっと息を飲むのがわかった。
べラのバナナ袋を手にしたまま、宙で固まっている。
「どうしたの?」
「いや、あの、これ・・・」

お兄さんが指ししめすバナナの袋の中には
こっそり「3粒のぶどう」がまぎれ込んでいた。
これは「していけないこと」だったので
わたしたちはべラの顔を見つめ、なぜこんなことをしたのか、その返事を待った。
まさか、ぶどうが食べたくてしたわけではあるまい。
「3粒だけ」なんて、いったいなぜ・・・

「あのー、僕オウムを飼っていてね。オウムが好きなんだよね・・・ぶどう」
と、もじもじと照れくさそうに言う。
「はあ?オウム用のぶどうですか、これ・・・」
「はい、おやつに」
あきれて言葉を失っていると、お兄さんはくすりと笑い
「わかりました。オウムが喜んでくれるといいですね」
と、見逃してくれた。

家に帰り、オウムを前に今日の苦労を語るべラ。
「味わって食べるように!」
オウムは片足でぶどうをつかむと、はじはじとおいしそうに食べ始めた。

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