【一日一作プロジェクト】コースターにペイントして「春夢野(はるゆめの)」を作った。いよいよマラガ県で1番高い村アルファルナテへ。村を貫くように小川が流れている。
「おお〜、川沿いに植えられたこの樹は!」
明らかに桜かアーモンド(写真)。なのだが、問題はその区別がつかない。ので、思い切って喜べない。
「わからないの?日本の国花なのに?」
そう言われても、桜には、沢山種類があるのだ。お茶を濁しながら、まずは村の中を散策。アンダルシアらしく、通りのあちこちに
「アーチ」
がある。くぐり抜けるのが楽しい〜。私の大好きなアーチ。たいていレンガやタイルでできていて、漆喰の白壁によく似合う。植物も飾られていて、すてきな空間。
それにしても、人がいない。週末のお昼なのに。観光客、ゼロ。開いているバルやカフェテリアも、ゼロ。
「うそでしょ。バルがないなんて。聞いてみようよ」「あの、この辺に開いているバルはありますか?」
通りを歩いているおばさまに尋ねると
「ないねぇ。バルはみんな閉まってる」
ええっ。そんなことが。スペインでバルが開いていないなんて。週末のお昼の12時に?にわかに信じられず、別のおばさまに尋ねてみる。
「うーん。開いてる所は、ないねぇ」
いったい。この村の人達は、バルに行く習慣がないのか。それでもあきらめきれず、小さな生活雑貨屋(よろずや風)で尋ねると
「お茶がしたいのたら、ほら、あの角にある『老人センター』で飲めるよ」
老人センター(汗)。確かに飲めるかもしれないが「テラスに座ってカフェ」したいのだ。村の景色を眺めながら。そういう店がスペインでは、たいてい村の広場にある。
「仕方ない。老人センターへ行ってみよう」
ドアを開けると、おじいさん達がいっせいにこちらをにらんだ。凝視。ここまで観光客やアジア人が来ることはめったにないのだろう。朝からワインやビールを飲んでいたが
「トーストありますか?」
と尋ねると、パンもサンドイッチも、食べるものは何一つないのだった。
「こんなことは、初めてだ」
ハビ吉が、愕然として呟く。このバル天国のスペインで。よろよろと老人センターを後にし、引き続きアルファルナテ村を散策。30分で一回りできてしまった。
「見て!この通り、海抜928mだって」
その小さなタイルに書かれた標識がなければ、気づかず通り過ぎてしまっただろう。周りを高い山々に囲まれた山間の村。1月の大寒波の際には、この一帯は雪に覆われたらしい。
「桜の花を探しに行こう!」
村を出て、郊外へ。緑の絨毯がどこまでも続く。なんて美しい!人も車も通らないので、静寂の中、鳥の声だけが響き渡る。
「ああっ、見て!あれ桜だよ!!!」
絶対そうだ。黒っぽい枝に、白い花が!(写真)。車を止めて、走り寄る私たち。柵があって、すぐそばまでは行けないけれど
「桜だーーーーーーーっ」
本当に存在した。桜の木が。マラガ県の北東部、グラナダの県境に。こんなさびれた、人里離れたところに。人1人、車1台、通らない山間の里に。
「十数年ぶりに見る桜」
は、私の心に新しい風を吹き込んだ。そばまで近寄れなくても、満開じゃなくても、少しもかまわない。出会えたのだ!「存在する」こと以上に、大切なことがあるかしら。
「もっと先まで行ってみよう」「よっしゃ」
ハビ吉の声に、再び車に飛び乗る。この先にはどんな景色が。サプライズは続く。(明日に続く)