【一日一作プロジェクト】空に1本、すっと伸びる飛行機曇に誘われて「天上花(てんじょうばな)」を作った。ラクガキで。昨日の続き。井戸端誕生日会。
「トリーハにロウソクを立てよう」「もも、願いごと!」
トリーハとはスペイン式フレンチトースト。手作りなだけでも感激なのに、ロウソクまで立ててもらって(涙)。祈りを捧げてから、勢いよく灯を吹き消す。
「・・・・・・!」
心の中で、そっと願うのがスペイン式。どうか祈りが通じますように。命の尊さ。それを守る。守られる世界に。
「クンプレアニョス・フェリース〜」
みなさんの歌声に、胸が熱くなる。こうして「井戸端グループ」が発足したのは、まさに1年前。スペイン政府は非常事態宣言を発令し
「スペイン全土のロックダウン」
に踏み切った。あれから1年。皮肉にも、コロナが私たちをより深く結びつけた。食べて飲んでおしゃべりして。アルコールはなくても十分な盛り上がり。その時だった。
「ブエナス・タルデス(こんにちは)」
20代後半のカップルが突然、階段を昇って現れた。
「どうぞ!こちらへ」「よかったらつまんで」
私たちはみんな、それが「お隣さんの家族親戚の誰かだろう」と互いに思っていたので、笑顔で2人を迎えた。すると。女性が爆弾発言。
「実は、通報がありまして」
きょとん、としている私たちを見回しながら、女性は胸元から何かを取り出した。
「ポリシア(警察)です」
その手に握られていたのは、まさに。映画で見るあの「警察手帳」だった。仰天して言葉を失っていると、お隣さんがぽつり。
「警察の制服、着ていないんですね」「ええ、セルビシオ・セクレートですから」
ええっ!シークレット・サービス⁉︎ そんなすごい捜査班がなぜ?この井戸端誕生日会に?その時、女刑事の視線が、中央に置かれたミニテーブルの上に・・・
「実は『ボテジョン』をやっていると通報がありまして」「それも10名以上で」
そこで男の刑事が苦笑い。ボテジョンとは、若者たちがアルコールのボトルを持ち合って酔っ払う飲み会。のこと。それが、来てみたら
「セニョーラが4人でお茶していた」
ソーシャルディスタンスもあり、2人は家の中にイスを入れている。だいたい飲食しているので、マスクはなしでもOK。私服刑事たちは、何やら連絡を取り合いながら
「証拠写真、撮らせてもらいますね」
と、中央にどんと置かれたテーブルに近寄った。まさか、私のチキンが!警察の証拠写真になろうとは。なんという運命。
「誕生日のお祝いをしていたんです」
私はイスから立ち上がり、刑事たちに説明した。2人はうなずきながら聞いていたが、なんとなく拍子抜けした表情で、急速に勢いをなくしていった。
「じゃ、これで」「引き続き、楽しんでください」
刑事2人を見送りながら、狐につままれたような気持ちになった。そして。ほっとしたとたん、みんなで大笑いしてしまった。
「もも、すごい誕生日会になったね」「刑事まで来てくれるなんて」「映画みたいだった〜」
終わりよければ、全てよし。にしても、通報したのは、誰なのかしら。井戸端会議に誘ってほしかったのかなぁ。