16. ケイコさんの超過密ライフ

開演1時間前、控え室のドアがそっと開くと
ひとつの顔がのぞいた。
「うわぁ~、ケイコさんっ」
「ケイコ~!」
べラなど、両手を広げてすっかり「再会ハグ」体勢。

ケイコさんは、本編69話「ケーコさんと豪遊」でおなじみの
15年来のコミローナ(食いしん坊)友達である。
今や、食い倒れの大阪で「食の道」を極めつづけておられる。

わたしたちが出会ったのは15年前、
ケイコさんが留学生をしているときであった。
マラガのライブハウスで演奏していたわたしたちの
目の前に座っていた「お客さん」のひとりが、ケイコさんであった。
わたしたちはすっかり意気投合し、友達となった。

その後、ニッポンに帰国し、
再びマラガにバケーションにやってきたときの話が
この「69話」である。

さて、大阪へ戻ってからのケイコさんの活躍はめざましい。
食だけでなく、ワイン、音楽ライブなど、
あらゆる催し、研究会に顔を出す。
いったい、いつ家にいるのかと疑いたくなるようなスケジュールで
今週末は東京、と思ったら来月はヨーロッパって、
ちょっと、行動の範囲が広すぎないか。

そんなケイコさんはこの日も、
「昨日ライブで東京やったから、名古屋でふたりのライブ見て、
その足で今夜、大阪へ飛んで帰るわ~!」
と、とんでもないことを言っていた。
マラガでのんびり生活しているわたしたちには
ケイコさんの「動き」は、時間的、距離的に考えられないのである。
「ははぁ~っ」
と、聞くだけで、どっと疲れが出てくる。
「無理しないでね」
と、言いながら、わたしたちは7年ぶりに早口で、現状報告をした。

スペインへ帰るのが関空からだったので
わたしたちは「出発前夜・大阪食いだおれツアー」を企画した。
が、結局、40度近い高熱が出てしまいNG。
そのことを電話で伝えると
「ええーっ、で、薬飲んだの?」
「飲んでない。薬きらいだもん」
「何言ってんの!熱あったら、飛行機乗れへんよ、もう!」
「まだ、4日あるから・・・」
「早く、熱下げるために、薬というものはあるんやから!
いい、ちゃんと薬飲んで。」

薬というのは、そのためにあったのか・・・・
そんな基本的なことを、まだいっしょうけんめい教えてくれるケイコさん。
ありがとう。
わたしは、友達っていいな、と改めて思った。

(「ニッポン驚嘆記・17」につづく)

 

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