バルセロナ行きが決まる

毎年5月になると、いつもバルセロナへ行っていた。これはもう
「年間恒例行事」
の一つと言ってよい。

なぜか。目的は一つ。バルセロナには、べラの大親友のルイスが住んでいるから。彼の家にお邪魔して数日過ごす、というのがこれまでの習慣だった。

べラが亡くなった後も、私はルイス&マリ夫妻を訪ねている。昨年も、おととしも。判を押したように。決まって5月の中~下旬に。それは、ルイスの誕生日だから。

私は彼を愛している。もちろん友人として。人生の先輩として。そして医者として。

彼はドクターなので、ベラが告知を受けてから、毎日電話で私を支え続けてくれた。

けしてうそを言わず。厳しい現実が、この先に待ちかまえていることを、彼は私に告げた。

毎日、毎週、私たちは電話でつながっていた。何度、二人で受話器を握りしめながら、マラガとバルセロナで泣いただろう。

その経験が、べラがいなくなった後も、私たちを強く結びつけている。

「プリンセサ、いつバルセロナに来てくれるんだい?」
ルイスはいつも私を「お姫さま」と呼ぶ。そんな人、世界に一人しかいない。

そして私も彼を「ドゥーケ(公爵)」と呼ぶ。二年前の誕生日の際は、リクエストがかかったものの、ピアノは弾けなかった。

彼の家にはピアノがある。その場所に近づくことさえできなかった。
「弾く気がなくなった」
「弾いても幸せじゃない」
と答えると、彼は何も言わなかった。

そして昨年の誕生日。
「ピアノ弾いてもいい?」
と、おずおずと聞くと
「もちろん。プリンセサをずっと待っていたんだよ、このピアノは」
と、お気に入りのイスをほくほくと持ち出した。

「いい顔してる」
弾き終えると、そう満足そうに言ってくれたルイス。今年の5月で、83歳になる。

なんとか時間をひねり出し、チケットを購入。5月27日が「春の発表会」なので、無理矢理その前に予定を詰め込んだ。

「ドゥーケ、バルセロナに行きが決まったよ!」
電話で飛行機の便を伝えると、最初の言葉が
「プリンセサ、ウィスキーとワインとマテ茶を用意して待ってるよ」
って。どんなお姫様なんだか(笑)。

やることが山のよう。で、どんどんスケジュールが埋まっていく。それでも「眠れて食べれる」ことに感謝。「痛くない」ことに感謝。

そして、私のことを「待っていてくれる人がいる」ことに感謝。

せっかくなので、うちの「大鏡」を紹介します。よく木枠をご覧ください。白っぽいところ、これすべてオウムがかじったあと。もう修理もせずほかってあります。

こうやって鏡の前でいつもダンスの練習。セビジャーナス、ルンバ、サルサ、バチャータ、ブレリア。さらに毎朝のストレッチ。
おかげで50肩もすいぶんよくなった気がします。

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