第62話 夢でつながっている

先日、初めて会う音楽関係者と打合せをしていた時のこと
「じゃ、念のためケータイの番号教えてください」

ケータイのない私は一瞬口ごもったが
次の瞬間、ベラは初対面の相手に向かって
「でも、伝書鳩はあります」
と言っていた。

パソコンもしかり。パソコンどころかE-mailもない私に
「じゃ写真をスキャナーで送ってください」
って、何なんだ?スキャナーって。そしたらベラ
「あ、今ちょうどインクが切れてて送れないですね」

こんなことだから全然営業にならない。
今年の目標はケータイを持つこと。
「そしてできればパソコンもあるといいな」
とこれはベラ。
うちの聖台にお供え物をして両手を合わせる。
「今年も無事、生きてこれました。ありがとうございます。
どうぞ来年もマラガ下町コミュニティをお守りください」

12月なので水の代わりに赤ワイン、おつまみのピーナツや
クルミ、お菓子なども添えて豪華だ。

ある日、みんなで一つしかないストーブを囲んで食事会をしていると
季節柄日本の大晦日とお正月の話になった。“初夢”の話に花が咲く。
最初は“日本文化習慣”の話だったがいつの間にか最近見た夢に移行していた。

こんな時語られるのはたいてい“悪夢“だが
笑えるのはお国が違っても悪夢の基本は同じこと。
時間通りに着けない、探しものが見つからない、
逃げようと思っても身体が思うように動かない、
食べようと思ったら目が覚めた、など。

実は私はこうした夢がかなり少ない。自分がいない夢を見たり(劇の舞台を見ている感じ)
夢の中の人物の中に途中から入り込んだり
結末が気に入らないと、その気に入らないところを
ビデオのように巻き戻して作り変えたりする。

そんなへんちくりんな自己都合的な夢を見る私でも
この7年間、毎月必ず決まって見る夢が一つある。

それは“日本で会社員をしている夢”だ。
舞台はいつも会社で私は必死に上司や先輩に向かって
「すみませーん、その企画書まだできてなくて」
「あっ、電話するの忘れちゃった!」
「あーあー、今すぐ確認します」
などとやっている。

ピアノの夢は見ても年に1、2度だというのに
これはいったい…。
スペインに来て日本語を話すのも月に数回というのに
日本のそれも会社の夢。
あの頃仕事をご一緒させていただいた方々は
スペインで夢に登場してるとはまさか思ってもいないに違いない。

日本に帰国した時、元上司や先輩に会い
「お久しぶり、元気だったか?」
と懐かしく声をかけて頂いた。
「はい、ご無沙汰しています」
と答えながら
とても、毎月、夢に見てます、とは言えなかった。

(第63話につづく)

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「第62話 夢でつながっている」への2件のフィードバック

  1. 夢に出るほど必死に仕事してたんですね。ほとんど夢を見ない僕の脳みそっていったい。

  2. 「会社の夢」でいつも会ってるので
    すださんと久しぶりという感じがありません。
    そのうえ夢の舞台がスペインだとみんなスペイン語になるので、
    すださんも私の友だちとスペイン語で話しています。いったいどうなってるんでしょうか、私の脳みそって・・・momo

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