第55話 モンゴロイドの血

スペインに来てから、よく外国人に間違えられる。
外国人といってもアジア系なのだが。まず、うちの近くの
中国人が経営する格安雑貨屋(100均みたいな)に行くと
十中八九は店員と間違えられる。最初は
「私、お店の者じゃないんで…」
などと言っていたが、何十回と行ってすっかり店内及び商品に精通してしまうと
「あ、ろうそくは2列目の奥ね」
「植木鉢は3列目の右側」
などとテキパキ答えてしまい、それを聞いた別の客が
「このスリッパの別のサイズはないのか」とか
「台所をリフォームしたいがどれがいいのか」など
私をお客様担当係と勘違いし、わらわらと寄ってくる。
この間など
「上の棚にあるスーツケースはいくら?」
と聞かれ、見上げたらスーツケースはちゃんと値札が貼ってある。
多分小さくて見えないのだろうと思い。
「あの大きいのが50ユーロ、小さいのが30ユーロ
こっちのデザインになると45ユーロですね」
って答えると
「どれがいいと思う?」
って。仕方なく
「どれくらいのご旅行なんですか?」
と聞いてしまう自分が悲しかった。

スペイン人だから中国人と日本人の違いが分からないのだと
思っていた。が、それは私の思い込みだった。
ある日、このお店に新しく入った中国人のお姉ちゃんは私を見るなり
「ニーハオ!」

「うーん」
スペイン人だからではなく、国際的に私の顔は中国系なのかも。
そんなことを思っていた矢先、今度は別の国の人に間違えられるという事件が起った。
それは中南米系の人たちが集まるバーベキューパーティでの出来事だった。
大半は中南米系だが、ベラ(見かけは金髪青い目のハンガリー人)や日本人の私や
スペイン人、オランダ人なんかもいる。

お肉を待つ間、いつものようにマテ茶をチューチューと飲んでいた。
一人のスペイン女性がのけぞるように驚いて
「えっ、あなた日本人なの!?」
そんなに意外な外見だろうかと鼻白む。
「南米なまりでマテ茶飲んで…ずっとペルー人だと思ってた!!」
って、中国人の次はペルー人。
ベラと住んでいるおかげで(せいで?)すっかり南米なまりのスペイン語になっていたのだ。

そういえば仕事でカザフスタン人にさせられたこともあったが。
しかし、と思う。
そこまで、かつて大陸を駆け抜けた“モンゴロイド”って
すごいじゃないか。スペインまで来てこうして祖先の血を実感させられた。

(第56話につづく)

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