「しみ」問題

『日本公演』が決まり、みるみるまに忙しくなってきた。
わたしたちがいない間の
「オウムの世話」
「ピアノ教室の宿題」
「ベラの日本語集中レッスン」
さらに、母のたっての希望である、
祖母とくがお世話になっている
「中津川ケアセンターでのファミリーコンサート」
と、やるべきことが怒涛のように押し寄せてきた。

が、「ニッポン」と、つぶやくたび
体中にひろがるこの、たとえようのない歓びは、なんだろう。
ニッポンに行くためなら、なんでもない。
るるるん、と鼻歌までわいてくる。

そんなとき、「エルム」のライブをプロデュースしてくれた
大野さんから、電話があった。
「劇場ジャーナル誌の取材が決まったよ!」
「わ~い」
無邪気に喜ぶわたしに、大野さんが冷静な声で言った。
「それで、化粧はどうするの?」
「はっ?」
「写真撮影あるんだよ、まさか、そのままじゃ・・・」
「いつもの化粧じゃ、だめですか」
「だって、カラーで載るんだよ」
「う~ん、ふだんしないからなぁ」
「日本では『しみ』も、ちゃんと隠すんだから」
「ひやぁ~、わたし、しみだらけですけど、どうしよう!」

その話をベラにすると、
「ももの顔って、しみだらけだよね」
と、まじまじと言ってくれた。
「かくす、ったって、どうやって・・・」
途方にくれるわたしを、ベラが励ます。
「でも、その『しみ』がチャームポイントなんだよね。
101匹ワンちゃんの犬とかさ」
「犬?」
「高級な犬だよね、あれ。」
「・・・・・・」
「それに、チーターやひょうだって、あの『しみ』があるから
価値があるわけだよね。それで毛皮を狙われる」
そして、さらに
「アメリカ原住民の乗ってた馬もたしか、『しみ』だらけだったよ」

ターザンになるのが夢で、動物が一番の友達であるベラに
相談したのがまちがっていた。
わたしは鏡をまじまじと見つめながら、いったい
「どうやって、しみを隠したらいいのか」考えた。

そのとき、大野さんの言葉が突然、脳裏によみがえってきた。
「だいじょうぶ。『壁ぬり』が趣味なんだから。
化粧を『壁ぬり』と思えば!」
そうか、壁ぬりか。
そういう目で、自分の顔を見つめたことはなかったな。
そうすると・・・なるほど。
「そうか!」
突然、すばらしい考えが、わきあがってきた。
「ねぇ、ベラ。しみの上に、『花を描く』ってのは、どうかな。
隠すんじゃなくて、生かすんだよ!
しみがあるからこそ、生まれた花って、すばらしいよね!」

わたしは、感動していたが
ベラは無言で、立ちつくしていた。そして
「いっそ、真っ白に塗ったら?舞妓さんみたいに」
と、言ってくれたが
真っ白な壁には、興味がなかった。

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「「しみ」問題」への7件のフィードバック

  1. 百貨店の化粧品コーナーで頼んで、メークしてもらってはどうでしょうか?
    口紅一本でも買えば喜んでやってくれますよ
    その口紅は、マラガにお土産で誰かにプレゼントすれば良いし
    使わないのであれば

    バンドネオンの話、時間が許すのであれば、早くわかりますか?
    間を取り持つ友人が13日には、一ヶ月イタリアに行ってしまうのでf^_^;)

  2. 「しみがあるからこそ、生まれた花って、すばらしいよね!」の発想はなかなかすごい。さすが、ももちゃん!って思いました。都合があえば、私がメイクしてもいいんですけど。。。いつあるのかな。その取材。ちなみに、私の仕事用ホームページはココ。
    http://toujours.jp/

  3. Tomilloさん、バンドネオン情報をおくります。

    購入先はウルグアイのモンテビデオ。
    友人のつてで、バンドネオンを4つを提供されましたが
    値段が適当だった中古の「ドブレ・アー」を購入しました。
    色は黒。
    購入したときは、音はすべて出ました。
    いちおう、ウルグアイで3回レッスンをうけたので。
    (開いて、閉じて、1つ1つボタンの音を確認しながら弾くので)

    ただここ5年間、実家に「おきっぱなし」なので
    どうなっているのか、わかりません。
    「弾いていないと、音が出なくなる」
    と、購入したときに言われたので・・・

    わたしが、日本に着くのが11月13日なので
    それ以降なら、いっしょに確かめることはできます。
    それ以前なら、豊橋市の実家にあるのを直接、
    見ていただくことになります。

    購入時、バンドネオン内部の「お取替え用パーツ」と言って
    予備のパーツ1個を、手渡されました。
    どう使うのかわかりませんが、木製で針金みたいのがくっついてます。
    (これは、今わたしの手元にあります)

    バンドネオンが手元にないので、写真も送れませんが
    興味があれば、楽器を見ていただけるよう手配します。
    購入当時(2001年)、日本円で15万円くらいしました。
    (もうひとつのエラの方は売却済みですが、30万くらいでした)

  4. クロ隊長!見ましたよ、仕事用ホームページ。
    すごいい~っ、メークアップの会社をたちあげておられるとは。
    すごいではないですか~!

    「トゥージュール」のページを見ながら、
    ふたりして、しばし呆然としておりました。ベラが
    「こんなところにももが着いたら、野生児が来たって感じだろうね」
    今からでも、打つ手はありますかね。

    もし、お時間があえば、ぜひメイクをお願いいたします。
    いや、時間がなければせめて、
    「どうやったらいいのか」だけでも、教えてください。
    うちでひとり、特訓してみます。

    ちなみに「劇場ジャーナル」の取材は、
    名古屋で11月19日(月)16時です。
    その後、エルムのライブもあるので、
    顔を洗わないようにしないと・・・

    もし、クロ隊長のお都合があわなければ、
    Tomilloさんのアドバイスにしたがい
    丸栄や三越の化粧品売り場に、突入したいと思います。
    しかしライブや取材のたびに毎回、突入していたのでは、
    怪しまれますかね。

  5. 11月19日(月)16時からですね。その日なら融通が利くと思うので、メイクさせていただきます。たぶん、ももちゃんの肌を根本からメンテしないといけないと思うので、ちょっとお時間いただくことになると思います。詳細は大野さんに確認して、ももちゃんに連絡がいくようにしてみますね。

  6. あ、ありがとうございます!
    よろしくお願いいたします。
    クロ隊長のお言葉「根本からメンテ」に、ひざを正す思いです。
    お世話をかけて申し訳ありません。

    「いったいどうして、ここまでほかったらかしておいたのか」
    どうか、叱らないでくださいね。
    自分の肉体をふりかえる機会がなく・・・

    これから始まる「メイク道」に、るるるん♪と心踊らせています。
    「きれいになる」って、楽しそう。
    やったことないこと、ってわくわくするなぁ~。

    「クロさん、すばらしですね~!
     みなさん、おせわに・・・・なりました」(過去になってるっ)
    (ベラの言葉そのまま)

  7. 叱ることはないので大丈夫。予想ですが、肌は荒れてても、アイフレームとかは、何もしてない分、しっかりしてるんじゃないのかなと思います。ま、お会いしてみないとわからないけど。

    ベラ、日本語、頑張ってますね。スペイン語のわからない私なので、ベラが少しでも日本語が理解できるとありがたいです。

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