15. トミージョ、名古屋に現る!

いよいよ、ライブ演奏まであと2時間。
わたしたちは、「エルム」の2階の控え室で、準備を始める。
そのとき、お店のスタッフの方が
「トミージョさん、という方が、下におみえになってます」
「ええっ・・・」

わたしは、心底おどろいた。
トミージョは「Tomillo」の名で、
このブログに何度もメッセージを送ってくれている「謎の人物」である。
以前、マラガに留学していたというトミージョは、
マラガの店や料理、旅などに的確なコメントを書いてくれていた。
そして来日公演のことを知ると
「必ず、行きます!」
と、ブログにメッセージが届いた。

「うれしいねぇ~」
「やっと、トミージョに会えるね」
わたしたちはその言葉に心を躍らせていたが、
本当に来てくれるかどうかは、わからないなぁと思った。
なにしろ月曜日の夜で、豊橋から一人、
見たこともないわたしたちのために、ほんとうに来るのだろうか。

答えは「シィ(イエス)」であった。
会場におりて行くと、一人のさっぱりとした感じの若い女性が
こちらをまっすぐ向いて、立っていた。
「トミージョさん?」
「あっ、ももさん・・・」
わたしたちは初対面であったが、同じ「マラガの飯」を食った仲。
「うわ~っ」
とマラガ式に、しっかり抱擁で挨拶した。
初対面でも頬にキスするマラガでは、当然のなりゆきである。

「これ、プレゼントです」
トミージョがわたしの手に押し付けたのはなんと、
豊橋名物「ヤマサのちくわ」と
「18色マーカーセット」であった。
ブログのイラストを描くのに、マラガではマーカーがなく困っていると
わたしがブログに書いたのを、おぼえていてくれたのだ。
「うわぁ~、ありがとう!」
わたしたちは、10分たらずだったが自己紹介をし
すごい早口であれこれ情報を交換し、
わたしはトミージョが豊橋に住み、美容師であることを知ったのだった。

ベラはトミージョを「25歳くらいの男の子」と思い込んでいたので
「うわぁ~、チカ(女の子)だぁ!」
と、本人に向かって平気で言いながら、ハグをしていた。
豊橋からで、帰りが心配になり
「最終電車やバスに間に合わないといけないから、途中で帰ってもいいからね」
と言うと、
「だいじょうぶですっ!」
と、トミージョは力づよく言いきった。そして、その言葉どおり
ライブが終わっても、わたしたちのあいだをこまごまと動き回り
みんなのカメラの「シャッター押し係」を、進んでしてくれたのだった。

「トミージョは、女の子だったんだぁ~」
とホテル帰っても、べラはまだ言っていた。そして
「また、会えないかなぁ。こんなところまで、本当に来てくれたんだよ!」
人生初の「ヤマサちくわ」をぽりぽり食べながら
うれしそうに、そしてちょっとさみしそうに言った。

(「ニッポン驚嘆記・16につづく」)

~音楽と絵の工房~地中海アトリエ・風羽音(ふわリん)南スペインだより