5. トイレ講座と連れション

こんにちは。べラです。
ニッポンのホテルに、いくつか泊りましたが
一番、驚かされたのは「トイレ」です。
名古屋、豊橋、岐阜、大阪と、ホテルがかわるたび
「トイレの使い方」が、まったくかわってしまうのです。

まず驚いたのは、座ると「温かい」ことです。
こんなことは、生まれて初めてです。最初は座るたびに
「ああっ」
と、その思いがけない「人肌ていどの温かさ」に、
お尻を浮かせていました。

次のトイレでは、座った瞬間、まだ何もしていないのに
「ジャ~ッ」
と、すごい勢いで水が流れ出しました。
いや、よく見ると「音だけ」で、実際に水は流れていません。
いったい、どうしてこんなことが起こるのか。
こっそり夜中にトイレに行きたくても音が気になり、気が気ではありません。
「消音システムだよ」
と、ももが言うのですが、その理由がまったくわかりません。
「まさか!そんなこと、誰が言ったの?」
と言うと、ももは大笑いして
「ニッポン中についてるシステムだよ」
と、言うのです。信じられません。

そして、次のトイレでは、用をすました瞬間、
「シャ~ッ」
と、何かがお尻にむかって、発射されました。
「うわあぁっ」
と、僕は飛び上がりました。
「今度は何だ!」
と、便器を見つめていると、それは「小さなシャワー」なのです。
それも、頼んでもいないのに現れ、用が終わると消えていく。
「お尻洗浄シャワー」と、ももが教えてくれましたが
一度など、早くお尻を上げすぎて、
シャワーが外に吹き出してしまいました。

さらに困るのは、洗面台の「蛇口」の形やシステムが、ことごとくちがう。
「ひねる」「押す」「上げ下げ」「ひっぱる」・・・・
あらゆる「動詞」を試して、やっと水が出る。
もう、ぐったりです。
寝ぼけてトイレに立ったら、まず手は洗えないでしょう。

一度、どうやっても水が出ず、ももに助けを求めたら
「ほら、こうやって~」
と、蛇口の下に、両手を持っていきました。
すると蛇口から、何もしないのにとつぜん水が出てきたのです。
「どうやったの?」
「手をかざす」

その動詞が、「水」「蛇口」とどうしても結びつかず
僕はこのときになって、はっきりと認識したのです。
ニッポンではまず、「トイレ講座」を受ける必要がある、と。
一番ほっとするはずのところで、
あらゆる思ってもみないことが起こる。
ももがいなかったら手も洗えない、というのは困ったことです。

その点、きみどり家のトイレは、一番わかりやすくよかったです。
ただひとつ困るのは、のぶゆきさんが
トイレのドアの向こうで待っていて
「ベラちゃん、だいじょうぶ?」
と、心配してずっと立っていることです。

その習慣は、レストランに行っても、駅に行っても続き
結局、ひとりでトイレに行くことができませんでした。
そのことを言うと、とみ子さんのお友達が
「それはね、連れション、って言うんだよ」
と、ていねいに教えてくれました。

(「ベラの部屋・6」につづく)

~音楽と絵の工房~地中海アトリエ・風羽音(ふわリん)南スペインだより