おつり問題

郵便局へ「支払い」に行くと、思いがけない出来事が待っていた。請求額25ユーロに対し30ユーロを払う。当然おつりは「5ユーロ」のはず。

「あの、おつりは?」「あなた、ぴったり払いましたよ」「ええっ」「間違いありません」

数秒、固まっていた。あまりに自信満々のお姉さんの口調と態度に。

「いや、30ユーロ渡しました」「いえ、ぴったり25ユーロです」

そこには、1パーセントの疑いもゆるぎもなかった。なんだか自分の方が間違っているのかも、と思えてくる。しかし。もう一度、食い下がった。

「確認してもらえませんか」「ちょっと時間がかかりますよ」

お姉さんは明らかに気分を害した様子で、ため息まじりに説明した。

「今日の収支を全て計算し、手元にある現金を全て数えて、一致するかどうかを確かめなくてはなりませんから」

その嫌そうな顔を見ていると「もういいです」と言いたくなってくる。が、それと同時に「やってもらおうじゃないか」という気も湧いた。

「お手数をおかけしますが、お願いします」

はぁあ〜みたいなため息と共に、お姉さんが計算を始める。もちろんそのせいで、窓口の業務は完全ストップ。周りの人たちも

「はたして」

的な視線で、私たちを見つめている。その15分の長かったこと。お札から始まり、硬貨を一枚一枚数えていたお姉さんの手が、ぴたりと止まった。数秒の沈黙。

「おつりです」

カウンターには5ユーロ札が乗っていた。謝罪はもちろんなかった。でも、何よりほっとして、お礼を言って郵便局を出た。

その5ユーロで一人ランチ(笑)郵便局のお姉さん、ありがとう。