2.名鉄でやっと豊橋へ!

昨日の続き。

「現金でしか名鉄の切符が買えない」ことを初めて知り、しばし名鉄の窓口で立ち尽くす。これを「呆然」と言う。田舎のローカル線ならまだしも天下の名鉄、それも名古屋国際空港の構内にある「世界の玄関口」で、ですよ!

日本円の現金のみ?ビザカードもアメリカンエクスプレスもマスターもだめ、ってこと?これはちょっとすごいと思う。私の住むマラガ駅でさえ、電車の切符を買うのに、これらのカードはちゃんと使える。

今、元気になって改めて書きながら、腹が立ってきた。あの時は体力がなかったので、ただただ電車に乗れない、家に帰れないショックで座り込みそうだったが、こうして元気になってみると、今すぐ立ち上がって名鉄前で「デモ」でもしたくなる。

さて、話を進めよう。
結局、名古屋空港に戻り、「JTB」にてカードで切符を買い、なんとか豊橋まで行けることになった。が、「ミューチケット」は買えないのである。これだけは
「名鉄の窓口で、現金でしか買えないので…すみません」
あくまで、現金にこだわる名鉄なのであった。JTBのお姉さんは謝りながら、しかしぽろりと
「でも360円なので・・・あの、それくらいはありますよね?」

指定席が買えないショックで、しばらく返事ができないでいる。「徹夜&食事抜き&発熱」に、さらに「立って豊橋まで一時間」が加わろうとしているのだ。
「いえ、一円も持ってません」
「・・・・・すみません」

お姉さんは、本当は謝らなくてもいいのだが、たぶんその時の私の形相が「すさまじくやつれて絶望的」だったのにちがいない。まゆげをへの字にしながら「がんばって!」と、見送ってくれた。

名古屋空港から神宮前までは無事、座ることができた。
問題は「神宮前」の乗り換え時に「席が取れるかどうか」である。身軽な時なら、ひょひょいと空席めざして突進することもできる。が、大きなスーツケース&手荷物二個。これを左右に抱えて「よっこいしょ」とやっているまに、空席など埋まってしまいそうである。

「神さま、どうか座らせてください!」
豊橋行きの特急が、ホームに滑り込んでくる。一見したところ、空席がパラパラとあるのを確認。私はスーツケースを左右に抱え、ドアが開いた瞬間、勢いよく乗り込んだ。

その姿は、「情け容赦なく」「髪を振り乱して」「一目散」「恥もなく」「猪突猛進」「一本勝負」を、すべて一緒にしたような状態だった。

「あー、座れた・・・あ、、あ、ありがとうございます」
思わず合掌。あとはこのまま座っていれば、豊橋まで運んでもらえるのだ。あぁあ。駅には父が待っていてくれるはず。
「もう安心じゃ~」

再会した父は、私のあまりの「よれよれ」ぶりに、一瞬目を見開いて固まっていた。が、これだけ大きくなっても娘は娘なので、私の体調を気づかい、温かい山かけうどんを食べさせ、すぐにベッドに寝かしてくれた。

枕元はあっというまに、水やジュースやみかんやホカロンや体温計でいっぱいになった。私のせいで、父はいきなり看病が始まってしまったので
「申し訳ないなぁ」
と思ったが、目を閉じていると、なんだか小学生だった頃の記憶がよみがえってくる。よく父に看病してもらったなぁ。扁桃腺をはらして。
「こんなことは、何年ぶりだろう」

スペインへ渡り、何でも自分のことは自分でする習慣が身についていた。いつでもどんな時でも「だいじょうぶな私」が、いつも私を守り、支えていた。が、今回はどうにもだめ。体が起こせない、動かない。
「せっかくのクリスマス、大みそかお正月なのに・・・」

悲しくなったが、まだそのときは「へとへと」の始まりにすぎなかった。
★写真はうちにあるアロエ。アロエを食べさせて「母と敦美お姉さんを元気にしたい」と、べラが購入を希望。母が我が子のように大切に育てていた。二人がいなくなった今、父がかわって育てている。なんと!「赤ちゃんアロエ」も生まれました。

~音楽と絵の工房~地中海アトリエ・風羽音(ふわリん)南スペインだより