闇を包むぴかり

【一日一作プロジェクト】石にペイントして「闇を包むぴかり」を作った。大好物のバナナを見るや、一目散に飛んできたオウム。私の手から奪い取るや一心に

「皮をむき始める」

おぉお〜。前は皮をむくことさえ知らなかったのに。何事も進歩するのだ。ささやかな感動に包まれていると、ものすごい勢いでつつき始めた。

「一食分は、一本の5分の1程度」

なので、いつもは切り分けて与えている。その前に手元から奪われたので勝手に食べ散らかされ、テーブルにはバナナの残骸が。あまりの惨状に

「無残やな・・・」

と、呟いた。そのとたん

「かぶとの下のきりぎりす」

と、続きが口をついて出た。俳句を覚えていたのはいいが、日本文化からずっと遠ざかっているので「出典元」が思い出せない。誰のだったっけ?私の中では完全に

「横溝正史の『獄門島』」

なのだが、まさか「俳句に見立てて殺害した犯人」の作。ってことは、ないよなぁ。金田一耕助でもないし。グーグルで検索してやっと「松尾芭蕉」であることを確認。

「無残やな、兜の下のきりぎりす」

あの俳句を「獄門島」で覚えている人は、けっこういるのではないか。「きちがいじゃが、しょうがない」のセリフと一緒に(笑)。ねぇ。はるか40年前に出会った

「横溝正史の金田一耕助シリーズ」

は、私を夢中にさせた。小学生後半から中学生にかけて、本を読みあさり、テレビドラマも欠かさず見た。それまで大きな活字&サイズの本を読んでいたのが

「中学生に上がる時に初めて読んだ『文庫本』」

として、私が選んだのが『獄門島』だった(笑)。なかなかすごいスタート。古本屋に通い、あの黒っぽい表紙のおどろおどろしい横溝正史シリーズを何十冊と買ったっけ。

今思えば、金田一耕助を演ずる古谷一行の声がよかった。温かくて人間的で。どんな凄惨な事件の中でも、あの声を聞くと太陽や陽だまりの匂いがして、ほっとした。

「闇を包むぴかり」

闇を光(ぴかり)が包む。昼と夜。日差しと月。光と闇。晴れと雨。男と女。二つで一つ。小さな石の中に、一つの世界がある。