夜8時のテラスコンサート

スペインのコロナウィルス感染者は33000人を越えた。1日で4400人増。どこまでいくのか。友人のメッセージにうっすらと絶望感がにじむ。そんな中、ハビ吉から電話が。

「外出禁止令だからって、通話ができないわけじゃない。知ってる?」

「外出禁止令になってから9日間、一度も電話がないけど、どういうこと?」

最初に言っておきたいが、私たちは毎日メッセージしあっている。ハビ吉に至っては「今日何を食べたか」まで写真で送ってくる。

「だって、毎日メッセージしてるじゃん」「・・・・・」

私の答えは明らかに「不正解」なのだった。ハビ吉的には。

「僕なんか折り返しの電話だけで、時間が足りないくらいだよ。ももは今日は誰としゃべったの?」

「えっ?あぁ、ハビーと。今。それだけ。あとはオウム。ずっとペイント&コラージュしてた」

「まさかそれだけで、1日が終わった。ってことはないよね?」「そうだけど。あっ、棚も解体したよ!」

私たちの会話はことごとくかみ合わない。「毎日何を食べたか写真を撮って送るように」と言われ、撮った写真がこちら。

さて。今うちの玄関は、解体した棚の廃材でドアも開けられない状態。本来なら今すぐ捨てたいところだけど

「外出禁止令を取り締まるパトカーが、うようよしている非常事態」

の中、よっせよっせと2メートル近い廃材を運び出していたら、ものすごい勢いでサイレンを鳴らしたパトカーに呼び止められそう。

「注意のステージは終わり、今はもういきなり罰金」

だからこそ「夜8時のテラスエール」が、心を洗ってくれる。みんな出てくる出てくる〜。あんまり一生懸命に拍手をしたので、手と腕が痛くなってしまった。

こんな状況の中、働いてくれる人達への感謝と勇気の分かち合いタイム。お隣の棟では懐中電灯をピカピカ光らせたり、ゆっくり左右に振る家族も。

「まるで心を1つにするテラスコンサート」

名前も知らない人達と手を振り合い、言葉を交わすことなくお互いを思う。そのたった10分の儀式の中に、感謝と勇気、覚悟と優しさが詰まっている。

これからスペインはもっと大変な局面を迎えるだろう。すでに死者は2000人。だからこそ毎日手にしているものを大切に、全力で絵を描こう。