限界を超える体験

昨日の続き。「フェリア告知ポスター」提出期限当日の朝9時。私はまだ「応募用紙」と「履歴書」を書いていた。

タイムリミットはお昼の2時。うちからはバスを2つ乗り継いで、のべ2時間の道のり。もちろん行ったこともない場所。かなりの不安度。

まずはセントロへ。そこで乗り継ぎのバスを待っていると、大きな包みを持った女性が!それも、私のと全く同じサイズ。

「ああっ、市役所に提出しに行くんだ」

ものすごい安心感。思わず話しかけてしまう。すると、もう一人男性が近づいてきた。その手にも、やはり同じサイズの包みが。

「じゃ、一緒に行きましょうか」

和気あいあい。なんとなく、これで間に合う。という気になる。そしてバスを降りると、ある建物に向かって、ぞろぞろと人々が吸い込まれていくのが見える。

その手には一様に、同じサイズの包みが。一列に並んで受付。その時、バスで一緒だった女性が、深々とため息をつきながらつぶやいた。

「久しぶりに試験前日みたいな気分だったわ。昨夜なんて緊張して眠れなかった」

うなずきながら、私は昨夜の「蚊の襲来」を思い出していた。ボコボコにされながらも眠り続けた私は、疲れすぎて緊張すらできなかった。

「今回は時間をたっぷりかけて用意したの。もし今朝になってもまだバダバタして、書類とかを書いてたら気がおかしくなりそう」

そこでも、私はうなずいていた。口には出さなかったが、彼女にとって「信じられない」ケースそのままが、私なのだった。唯一同じなのは、提出期限の1時間前に提出したこと。

「はい。これで受付完了しました!」

「本当に?これで全て?終わったの?」

思わず聞き返してしまった。作品を見届けながら、身がふわっと軽くなるのを感じた。4日間で、本当に全てをクリアーして応募にまでこぎつけたのだ。

「もう、賞なんてどうでもいい」

バスを待ちながら、涙が出てきた。大満足のうれし涙。本当に応募できたのだ。最初は「入賞」を夢見ていた。でも、いつのまにか私のゴールは

「なんとしても応募」

になっていた。100、200を越える細かなコラージュ。その一つ一つにペイントをして。全ての必要条件をクリアーして。

時間との闘いだと思っていた。が、これはまさに「自分自身との闘い」だった。自分の限界への挑戦。そして。ふらふらよろよろぼろぼろの私に、すばらしい宝物が届けられた。

「自分の限界を超える」

という体験。アーティストとしての自信。なんと強烈な体感だろう。私の中心にマグマ、炎が流れ込むような。その経験こそが、宝だった。

公募作品なので、選抜が終わるまで作品を公表できない。でも、6月末にはぜひブログで、私が命を注いだ作品を見てもらえたらと思う。【完】