母との約束

日本は今日が母の日。だけどスペインは先週だった。女友達の多くが子供たちからのメッセージを待ち、食事に出かけていった。

私はついに母親にはならなかった。ので、亡き母に思いを寄せる日。そして20年以上前、スペインへ渡ると決めた時に「母とした約束」をくり返す日になっている。

「ピアニストになろう」とスペインへ渡った時、私は2つのことを誓った。心の中で。声も立てずに。それは

「これから先どんな事が起きても、絶対に不平不満を言わないこと」

そして

「与えられた命を全力で生き切ること」

それだけは、スペインへ渡ってから今日まで守り続けている。それ以外は、あまりいい娘ではなかったかも。そばにいて親孝行もできなかったし。

この心の中で私が密かにした2つの約束事を、ついに母に語ることはなかった。だから亡くなる数年前に、母が女友達に向かって

「あの子はね、辛いとか大変だとか一度だって言ったことはないよ!外国で生活するのは大変なはずなのに」

と笑いながら言ってくれた時、足元が崩れそうなほどうれしかった。

心配ばかりかけて、孫の顔も見せてあげられず、そばにいてあげることもできなかった。それがずっと心の中で痛みの場所になっていた。

でも。ピアニストには、なった。2歳半でオルガンを。3歳でピアノを買い与えてくれた両親を招いて、母の入院していた豊橋市民病院で演奏会ができた時は本当にうれしかった。

自分の子供はいないけれど、私の生活の中には毎日毎日子供たちがいる。20年以上レッスンを通して、その姿をずっと見つめ続けてきた。どんな時も。信じて。励まして。

鍵盤に向かう横顔。机に向かう後ろ姿。目をつぶっても、ひとりひとりの表情がすぐに浮かんでくる。ひじのつき方や、鉛筆の握り方まで。

こんなすばらしい仕事につかせてもらえたのも、お母さんが3歳の私に、強引にピアノ教育を始めたからだよ(笑)。

カーネーションの代わりに、このメッセージを送ります。お母さん、ありがとう!