7・収穫されないレモンの実

昨日の続き。母が大切に育てていた庭の「レモン」の木が、「五つ」も実をつけた。前回の帰国の際は、かわいい実を「二つ」ほど。それに比べれば、大収穫と言ってよい。

レモン水を毎朝かかさず飲んでいたべラのために、母が毎日大切に世話をしていたのだ(写真一枚目)。それを今では、父が引き継いでいる。

光を浴びて、気持ちよさそうにくつろいでいるその姿。なんだか仲良くひなたぼっこをしている母とべラに思えてくる。

だからあのレモンの実を、父が収穫することはきっとないのだろう。そうやって姿を変えて、庭に住んでいるのだから。

その横で、父と私は大晦日&元旦の準備。掃除、しめ縄、お供え・・・
「お正月だから、お雑煮を作ろうか」
父がいきなり提案する。
「えーっ、もう作り方忘れちゃったよ」

なにしろスペインへ渡って二十年、日本食をほとんど作ったことがない。父だって、これまでは母が作っていたのだから、二人して漂流状態。

「確か、白菜かほうれん草が入っていた気がする」
「だしはどうするんだっけ?」
「あ、なるとなると!」

なんだか雲行きが怪しい。それでも
「雑煮らしきもの」
ができれば、それでいいではないか。

「じゃ、ランチョンマット画を描くね」
「よし、それが終わったらスーパーに買い出しに行こうか」

大切なのは、楽しむこと。分かち合うこと。いつも母が言っていた言葉を思い出す。

「ももちゃん、心だよ。気持ちが一番なんだよ!」
そう、庭のレモンは語りかけてくる。
(明日に続く)