バルセロナへ行くことに!

毎年五月下旬は、これまでベラと二人でバルセロナへ行っていた。べラの大親友であるルイスの誕生日を祝うために。これまでの恒例行事を、昨年からは私一人で行っている。

そんなルイスから、先日電話があった。
「いつ、バルセロナに来てくれるんだい、プリンセサ(お姫様)」
ルイスは、いつも私を「プリンセサ(お姫様)」と、呼ぶ。ルイスのおかげで、私は一瞬、お姫さまになれるのだ。

だから、私もルイスを「ドゥーケ(公爵)」と、呼ぶ。そのやりとりを聞いて、大笑いしているのは奥さんのマリ。
「うちの二階のスイートを、プリンセサのために準備して待ってるよ!」

で、いきなり今年もまた、バルセロナ行きが決まった。昨年は特急AVEで五時間半かけて行ったが、今年はピアノレッスンが詰まっているので、飛行機を選択。

ドゥーケの誕生日祝いは週末。なので、できればその前後にひっかけて、バルセロナ周辺の「田舎の村」へも行ってみたい!

と、いうわけで、さっそくチケット探し。スペイン国内は飛行機が比較的安いので(発着時刻や航空会社、季節にもによる)、贅沢を言わなければ、マラガからバルセロナまで往復50~100ユーロ。もちろん、パソコンを相手に、自力でスペイン語で購入。

なんとか、安いチケットを入手。やれやれ。さっそく購入したチケットを、
アイフォーンで「スクリーンショット」し(ここまでが数か月!)、それをワサップで送ってみる。

「進化してる~!こんなワザができるようになったなんて・・・」
マリの第一声は、まさしく感嘆。であった。最近つくづく思うが、できない者というのは(自分のこと)
「少しできるようになると、褒められる」
という、すばらしい特典がついている。ダメ人間、万歳!

「ワインとウイスキーと、マテ茶を用意して待ってるよ、プリンセサ!」
どんなお姫さまなんだか(笑)。

「僕の誕生日のお祝いに、一つ、お願いがある」
ドゥーケは、今年の五月で82歳になる。
「私にできることなら、何でも」
数秒、黙っていたドゥーケが、ぽつりとつぶやいた。
「去年は聴かせてもらえなかったから・・・今年は聴きたいよ」
「・・・・・!」

ピアノだ。
去年は、弾けなかった。ピアノの前に座ることすら、できなかった。私にとって音楽は、ただただつらいものだった。

今年に入り、私は再びピアノの前に座るようになった。一年、とはそういう時間だ。編曲をする、作曲をするのが楽しい。仕事で弾く予定はまったくないけれど、二度と戻れないと思っていたピアノが、今の私の生活の中には、ある。それだけで、うれしい。

「ドゥーケの誕生日プレゼント、音楽と絵に決めた!」
しばらくドゥーケは、黙っていた。受話器を握る私たちの間を、忘れられない「一年前の光景」が流れて行った。

最後に二人で泣いたのは、いつだったろう。こうして受話器を握りしめて。マラガとバルセロナで。私たちは泣いた。ベラを失う前に、何度も何度も。毎日電話をかけて、私を励まし続けてくれたルイス。

私たちは、再会する。バルセロナで。きっとその頃には、ベラも駆けつけてくれるいちがいない。立ちのぼるバーベキューの煙で(笑)。

※写真は、マテ茶の容器に食いつくオウム。知ってましたか。オウムの舌は黒い。って。

CIMG4993