ついにドクターJの診察室へ

ベラの病院通いは、進んでいる。
これを「順調」というのかわからないが
毎週、何かにかかっており
どこかに通っている。
体の「どこかが痛い」のは
すっかり日常、となってしまった。

ベラいわく
「痛いところが3つ、まではふつう」
なのらしく
「相手にしない」
ことにした、らしい。

「歯」と「腰」に加え
「首」が回らなくなったときは
さすがのベラも自ら電話を取り
「電気療法およびマッサージ」を予約。

その一回目が、今週の水曜日に終了。
これから週一回、まずは5回受けてみることに。

その翌日の木曜日は
ドクターJを訪ねて
隣町のアンテケーラ病院まで行って来た。

Jさんは、ベラのバイオリンの生徒さんだが
整形関係のお医者さん。
「よかったら診療室まで来て!」
と、気さくに声をかけてくださり
ついにドクターJが勤める病院へ
行くこととなった。

「オラ、ベラ!」
病院の玄関に現れたJさんは
白衣に身を包み
いかにも「ドクター」という空気を漂わせていた。

診察室へ向かう間も
すれちがうドクターや看護婦さんと
にこやかに挨拶&雑談し
ここが「住みか」であることを感じさせた。

「毎日、ここで働いているんですねぇ」
思わず、感嘆のため息をもらすと
「はっはっは。職場だからね」
と、いつもうちでベラと大笑いしながら
バイオリンを練習している時のJさんに戻った。

Jさんのおかげで
X線の撮影から、脊椎関係のドクターの診察まで
あっというまに話をつけてもらえ
私たちはドクターJの後をついて
ドアからドアへと移動しているだけでよかった。

結果から言うと
「手術はもっと先の最後の手段で
まずは電気療法やマッサージ、
姿勢をなおす、体重を減らし負担を軽くする、
軽い運動や温浴で筋肉をほぐす、
など自分でできることから始めて
症状を軽くすること」
が第一目標、ということであった。

「膝が痛い」というベラのために
ドクターJ自ら
その場で膝に注射までしてくださった。
「膝が動くための潤滑油みたいなもの」
なの、らしい。

「痛くないですか?」
「ちょっとだけね」
それを聞くとベラは、眉間にしわを寄せ
「痛かったら、レッスンで仕返しします」

「これは慎重にしないと。あーはっはっは」
ドクターJは、いつも大笑いなのだ。
手術や診察、会議で忙しいはずなのに。
実際、私たちの面倒をみてくださっている間に
携帯が2回ほど鳴り
「終わり次第、すぐ行きます」
と、まじめな顔で答えていた。

「ムーチャス・グラシアス!
 貴重な時間を奪ってごめんなさい」
と謝る私に、いつもの笑顔を浮かべながら
「いいよ、今度ソルフェージュ教えてくれれば」
と、言ってくださった。

自分で、痛くない姿勢を見つけ
体重を減らし、膝の負担を減らし・・・
まずは自分たちにできることから
生活を改善していくこと。
それが、これからの私たちの課題となった。