編曲で、手首を痛める

今、パポ・ルッカに夢中なので
「ショパン」を編曲しているが
もちろん、ラテンジャズ&サルサ風なのである。

パポ・ルッカの「チュニジアの夜」の採譜
およびバイオリン&ピアノへのアレンジが終わり
続いてパポ・ルッカのピアノソロ
「ラメント・デ・コンセプシオン」の採譜が終わり
その次に「ショパン」なのであるが
勢いとして、どうしても体がリズムを刻んでしまう。

「どうして、ショパンがサルサになるんだろう」
ベラは、手渡された楽譜を見ながら
首をかしげている。
「これはまだ、第一稿なんだけど
とりあえず弾いてみてくれる?」
「・・・・・いいけど」

自分で編曲しておきながら
言うのもなんだが
「大変なことをしてしまった」
というのが、最初の印象。

が、ベラの手前
そんなこと口が裂けても言えないので
「これから、何とかします」
と謙虚に、自分の部屋に引き下がった。

それからが、勝負。
3日間、ピアノ室にほぼこもりっきり。
ピアノレッスン、および食事&睡眠の時だけ
編曲していない、という状態。

集中すると、私はいつも
「時間および肉体の感覚」を忘れてしまう。
つまり、今何時かとか
何時間ピアノを弾いていたのかとか
すっかり忘れてしまうのである。
で、後からツケが回ってくる。

「ああっ、痛い!痛いよー」
左手首が、少しだが脹れている。
が、その痛さったら、もうドアも握れないくらい。
「ああぁっ・・・どうしよう」

編曲していると、何度も繰り返しピアノを弾き
音を聞いて確認し
五線紙の上に書き記していくので
思った以上に、鍵盤を叩いているのだ。
それも、3日間。
私は手首をさすりながら、サポーターをつけた。
固定すると、痛みが和らぐ。

「だいじょうぶ?」
と、ベラは近寄ってきたが
「日頃、練習しないでいきなり
一日8時間も弾くから
こういうことになるんだよ」
と、あきれ返っている。

「だいたい、ももは2つのモードしか
ついてないんだから。
『オンとオフ』『100万馬力かゼロ』。
ふつうにやる、ほどほどにやるってことが
どうしてできないの」
「・・・・・」

言うことが、いちいちもっともなので
私は黙っていた。

するとべラは先日、特価で買ってきた
「研ぎ機」が古い型で
『オンとオフ』『100万馬力かゼロ』しか
ついていないこと、
スピードの調整がまるでできないことを
ため息をつきながら、語った。

「ももはきっと、古い型なんだよね」
何を言われても、黙っているしかなかろう。
研ぎ機といっしょか。
あぁ、早く左手首が治りますように。