32.焼肉ランチ&アロエ探し

IMG_0725 (Small) IMG_0731 (Small) IMG_0740 (Small) IMG_0748 (Small) IMG_0750 (Small) IMG_0762 (Small) IMG_0766 (Small) ニッポンに着いてからというもの、ベラは毎日、一か月もの長きに渡って
「アロエを買いたいです」
と、言い続けた。

口調はおっとりしているが、言い出したら聞かないことを、両親も私もよく知っているので
「ないと思うよ」
と言いながらも、花屋はもちろん、ガーデンセンターにまでベラを連れて回った。

案の定、アロエはなかった。いや、正確に言うと
「アロエです」
と言って、お店のお姉さんが見せてくれるものが、ベラの希望する品種とちがうだけで、あるにはあるのである。

「オレンジの花じゃなくて、黄色の花です」
と、無理やり私に訳させるが、お店の人も首をかしげるばかり。

車や電車に乗るたび
ベラは窓にへばりつき
「アロエが生えてないかなぁ」
と、ため息までつく始末。

そんな様子を一か月、横で見ていた両親は、
スペイン帰国までになんとかアロエを入手せねばと
「アロエ探しの旅」を企画。
ちょっと遠出して大きなガーデンセンターへ行ってみることに。

途中、「焼肉ランチ」を食べ、抹茶パフェまでペロリとたいらげた後は、いよいよアロエ探しの旅へ出発!

ガーデンセンターまでの道中、腹ごなしにきみどり家のメンバーを相手に
「ハンガリーの歌をうたいましょう!」
と、ハンガリー語で無理やり歌わせ、大笑いしているベラ。ったく。
私はアロエより、ユニクロと100均に行きたかったのに。

さて、いよいよガーデンセンターに到着。
「アロエありますか?黄色い花を咲かせるんですけど」
さすがに何度もくり返したので、スムーズに出る。
お姉さんは一生懸命探してくれたが、しばらくすると
「ありませんねぇ、すみません」
と、申し訳なさそうな表情を浮かべて戻ってきた。

がっくりと肩を落とし、帰りかけたその時
「ありました!一株ですけど」
お姉さんが私たちを追って、走ってきた。
その手には、まさしくベラの希望する「アロエべラ」が
しっかりと握られている。

「ああっ、これです、アロエ!」
ベラはうれしそうに、両手で鉢を受け取った。
「べラですよね」

品種の名前を口にするお姉さんに向かって
母は何を思ったか
「どうして、べラの名前知ってるの?」
「えっ、お探しのは、ベラですよね」
「そう、べラちゃんが探してたんだけど」

まったく意味不明な会話にくらくらしながら
お姉さんにお礼を言うと、私たちは再び車に乗り込んだ。

「でも、あのお姉さん、どうしてべラの名前知ってたのかねぇ」
車に乗ってもまだ、母が不思議そうにつぶやいているので
「だって、このアロエ、本当の名前は『アロエベラ』っていうんだもん」
「ええーっ、アロエべラ?」
「品種の名前を、お姉さんは言ってただけ」
「なーんだ、そうかぁ」

自分の勘違いに、母はしばらく大笑いしていたが
急に口調を変えると
「アロエベラ、っていうくらいだから
ベラちゃんがアロエ好きなのも、わかるよねぇ」
と、不思議な結論を出して、ひとり納得していた。